Short storys

□囚われの女神
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 「雨に濡れますよ。


 乱菊さん」



「七緒じゃない。
なによ? こんなところで」

明るく振舞う乱菊さん。

「いえ。
乱菊さんが目に入ったもので。
早く拭かないと風邪を引きますよ?」


「いいのよ。そういう気分なの、今日は」


「そういう気分・・・ですか」


「そう。わかった?
ほら、あんたも早く行かないと。
仕事中なんでしょ?
あんたに悪いわよ、あたし」

「いいんです。わたしは」

でもわたしは知っている。

乱菊さんが市丸隊長を忘れられない事。

しょっちゅう仕事をサボっては、
この木の下で空をみつめていること。

あなたの頬に、涙が伝っていること。

「これもギンのおかげよねー」

「何がですか?」

「毎年たくさん干し柿が食べれるじゃない」

「わたしは……」


わたしは嫌いです。

あなたと市丸隊長の思い出の味だから。
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