Short storys
□今宵、あなたに会いましょう。
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「あなたは病人ですか?」
それを隠しているだなんて
問い詰めたくはなかった。
わたしだって。
あなたが言ってくれる日を待っていた。
長い、長い日がたった。
わたしはあなたを好きなまま。
あなたはわたしに何も言わず。
もう、言ってくれないのかと思っていた。
でも、あなたは言った。
自分は病人だと。
だけどわたしが好きだと。
今度の月の出ない日、少しだけだけれど
病院を抜け出して、わたしに会いに来ると。
わたしは嬉しかった。
だけど、不安だった。
いつものようになるんじゃないかって。
わたしが平安のお姫様だったときも
江戸の商売人だったときも。
気がつくとあなたはいなくなっている。
代わりに……紅(あか)。