兎の詩
□腕に残るは。
1ページ/1ページ
腕に残るは、縦の傷。
自ら冒した、黒い罪。
…きっと、
痕は消えないだろう。
それくらい、僕が冒した過ちは大きなモノだったのだ。
時には頭を抱えて。
膝を曲げて。
大きな声で泣いた。
だけど。
「助けて」
なんて、言えなかった。
喉に張り付いて、出て来ない叫びが痛かった。
それを僕は僕なりになんとか形にしたかった。
僕は、形にしたかっただけなのに…。
《タスケテ》と叫べない僕の、最後の正当防衛。
………。
…………。
だから僕は腕を切った。
銀のカッターを僕の肌の上で滑らかに滑らせて。
赤い熱を迸らせて。
…しかし、それはきっと《禁忌》だったのだ。
だから腕に痕が残った。
他人とは違う、僕の罪。
僕の腕には白い痕。
僕の冒した、黒い罪。
一生消えない、重い罰。