月仰ぐ者 堕ちた月
□‐プロローグ‐
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ずっとこのままだと思っていた。
場所も、環境も、日常も。全て。
何も変わることなどないと思っていた。
ならばこの久々の感覚は…?
そう、恐怖だ。
幾月もの平和な歳月の中で忘れていた“怖い”という感覚。
本能で感じる身の危険。
自分に纏わり付く吸い付く様な気配。
『嫌だ…!来るな…!』
追い詰められる感覚に駆け出した。
捕まれば殺される。
だからと言って自分で祓える相手ではないのだ。
ならば――…逃げるしかない。
『っ……!』
あぁ、見つかる。見付かる、ミツカル。
ダレカタスケテ――…!