黒豹奮闘記
□第八幕
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『花見?』
朝の会議で報告された花見の話に×××は首を傾げた。
「そうだ。毎年真選組は春の景気付けに一杯やるんだよ」
『へー…酒出ますか?』
「…あんま飲むなよ…もう介抱はごめんだ」
以前にベロンベロンに酔った×××を部屋まで放り込む役をする羽目になった土方が顔を歪めて言ってくるが×××は知らぬフリ。
だって酒飲めるんだもん。
「大丈夫でィ。お前ェがベロンベロンになったら俺が介錯してやらァ」
『介抱と介錯が似てっからって一文字ごときに騙されると思うなよ?』
似てなくね…?
「わー、馬鹿の癖に読めたねー偉いでちゅねー」
『てんめェェ!!!』
また始まった沖田と×××のもう毎日恒例の喧嘩に土方はため息を吐き、隊士達に解散を告ると立ち上がった。
その間も沖田と×××は暴れている。
「…おいテメーら、いい加減にしろ」
『死ね、総悟ォォォォ!!!』
「お前が死ねェェェェ!!!」
「やめろっつってんだろうがァァ!!」
「『死ね土方ァァァ!!!』」
「何でェェェェ!!?」
『うわ、満開じゃねェか』
「当たり前でィ。じゃなかったら花見にならねーだろィ。馬鹿?やっぱ馬鹿だよね、お前」
『死ねよ。マジ死んでくんない?…てか土方さん、飲む前から疲れてたら楽しめませんぜ?』
花見ということでいつもとは違い、着流しを纏った隊士達を連れながら疲れた顔をした土方に×××が尋ねた。ちなみに×××は濃い紫色の着流しだ。
「誰のせいだと思ってんだ、誰の。…あ゙ー、ヤベ、疲れるわ」
結局二人の喧嘩を止めるのに骨を折る思いをした土方。それに比べて沖田と×××はピンピンしているが。
『あれ?そういや朝から近藤さんがいねーや』
「あぁ…近藤さんなら…」
×××が前方を見ると、丁度近藤が女に殴られているところだった。
『あの女…確か銀時とやり合うきっかけになった女じゃねェか』
「そうだ」
「それで今だに諦められず、ストーカーしてるって訳でさァ」
『へぇ…』
ストーカーって警察がやる事じゃないよな、とか思う×××だったがあえてツッコムのはやめた。
だって面倒くさいし、何よりその女は強そうだから心配なさそうだし。
「チッ、あいつら…あそこは毎年真選組の特別席だっつうの。おい、テメーら行くぞ」
土方は舌打ちと共に歩きだした。
実のところ、×××は酒が飲めてたらふく飯が食えれば場所とかどうでもよかった。
何より今は腹減った…
近付くにつれて相手方の会話も聞こえてきた。というか、これまた何の偶然か、その女と一緒に来ている連中の中に銀時や神楽がいたのだ。
「オイオイまだストーカー被害にあってたのか。町奉行に相談した方がいいって」
「いや、あの人が警察らしーんスよ」
「世も末だな」
「悪かったな」
土方の会話乱入に銀時達が振り返った。振り返った先には真選組一同の姿。
「×××じゃねーか」
『よォ』
「!×××ネ!久しぶりアル!!」
そう言うが早いか、神楽は×××に飛び付く様に抱き着いた。
『ぅおっ!』
×××は予想外の神楽の行動によろけながらも、何とか神楽を抱き留めた。
「×××ー、会いたかったアル!こんな連中と一緒で大丈夫だったアルか!?」
『…ありがとよ。大丈夫だ』
×××は満面の笑みを浮かべて×××を見上げる神楽にちょっと笑ってみせた。
あー、自分にもこんな顔出来たのか、と自分の事ながら驚きだ。