黒豹奮闘記
□第拾幕
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今の時間。人通りの多い橋の上で坊主を真似て座っている男、桂小太郎に近付く男が一人…。
「誰だ?」
「…ククク。ヅラぁ、相変わらず幕吏から逃げまわってるよーだな」
「ヅラじゃない、桂だ。なんで貴様がここにいる?幕府の追跡を逃れて、京に身を潜めていると聞いたが」
…目深に被った笠から見える左目の包帯、女物を思わず様な派手な着物にキセル…その男とは高杉晋助だ。
「祭りがあるって聞いてよォ。いてもたってもいられなくなって来ちまったよ」
「祭り好きも大概にするがいい。貴様は俺以上に幕府から嫌われているんだ。…死ぬぞ」
「よもや天下の将軍様が参られる祭りに参加しないわけにはいくまい」
「お前、何故それを?まさか…」
思わず高杉の方に顔を向ける桂。
「クク てめーの考えているような大それた事をするつもりはねーよ。だがしかし、面白ェだろーな…祭りの最中、将軍の首が飛ぶような事があったら。幕府も世の中もひっくり返るぜ。フフフ…ハハハハ」
「………」
「それに…将軍が来るなら必ず真撰組も来るだろう?」
「!高杉…ッお前…!!」
桂の焦った様な表情にククッと笑うと高杉はキセルをふかした。
「フフフ…楽しみだなァ。あの澄んだ瞳を壊す瞬間がよォ…ククク…居るべき場所を間違えた獣には教えてやるしかあるめェ…ククク」
「……くっ」