黒豹奮闘記
□第拾壱幕
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どんなに嫌であっても日にちは待ってくれないもので…とうとう祭り当日がやって来た。
べんべらべん
べんべらべん
賑やかに舞いやら出店やらがが開かれている。真選組はというと、一番見晴らしのいい矢倉の上で祭りを見物している将軍の護衛中だ。
『あぁー…帰りてェ…』
「あ?」
『俺、祭りとか大っ嫌いなんで帰ってもいいっすか?もう祭りに出てる出店とか食べもんとか、チョ〜嫌いなんっすよ〜エヘッ☆』
「………」
『………』
「じゃかましわァァァ!!!」
無駄にテンションを上げてエヘッ☆まで付けて言った×××の頭に土方の鉄拳が舞い降りた。
『いって!!』
「なーにーが『エヘッ☆』じゃ、ボケ!!両手に林檎飴とイカ焼き持って更に首から綿菓子の袋までぶら下げてる奴のどこが祭り嫌いなんだよ。真面目に警護しやがれ」
『…ちぇっ』
×××は土方に殴られた頭をさする代わりにイカ焼きにかぶりついた。
いや、自分的には結構本気で帰りたい。絶対高杉と接触することだけは避けなければならないし…
何でかって?
そりゃあ、自分がただの隊士であったらなら何の問題もないだろうが、まがいなりにも自分は元鬼兵隊幹部。
しかも高杉は我が師匠だ。
会いたくない。しかし、そう思う半面心のどこかで今どうしているのかと思ってしまう自分に嫌気がさす。
…なんて女々しいんだ俺は。
『はぁ…』
「どうした×××。まだ食い足らんか?」
『いや、さすがに満足ですよ』
「ったく…食い終わったなら真面目に警護しろ」
「ガハハハ!食欲旺盛なのはいい事だぞ。腹が減っては戦は出来んからなぁ!!」
『………』
自分の隣で豪快に笑う近藤と、近藤に呆れている土方。
そんな今では上司である二人を×××はただ見つめていた。
こんなふうに自分を仲間として接してくれる人達。でも自分はこの人達を騙しているをも同然だ…だって自分は本来ならば真選組に居れるような輩ではないのだから。
自分は幕府から粛清されてもおかしくない人間。
「おい」
『…あ?』