黒豹奮闘記
□第拾弐幕
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『ハァハァハァ…』
あの場から全力で逃げてきたはいいが、ふと足を止めた。
…このまま迂闊にうろつけば高杉と接触してしまう可能性大だ。
『あ゙ぁ゙ー…こんな時に…っっ』
×××は今だにバクバクと鳴る胸を押さえた。
俺が総悟に惚れてる?
…笑わせんじゃねぇ…
今心臓がバクバクいってんのはアレだ…アレ…あの…走ったからだ。うん、絶対。顔が熱いのだって気温のせいだ。思い出して赤面なんかしてるわけじゃないからね?そんな事絶対ないからね?
『ないよないよ、ありえねェから!!ー…一体何だってんだ…嫌がらせか?』
嫌がらせであんな…あんな事しやがって!!!マジで死ね!!
バクバクバクバクバクバク…
自分も自分でなんでこんなにバクバクなってんだ…
確かあいつは花見の時に事故的な感じで俺とキ、キ、キスしたって言ってた筈だ。もしかしてそれが相当嫌で俺にも同じ思いをさせる為にあんな事したのかもしれない。
『絶対そうだ。じゃなかったらあいつがあんな事するワケねェ…あ、おっちゃん林檎飴一つちょーだい』
「あいよー」
『どーも。…あ゙ーマジで死ね、総悟』
×××は悪態をつき、林檎飴を食べながらそおっ…と土方の隣に並んだ。
が、
「…てめーはどこ行ってやがった」
やっぱバレた。
『何言ってんですか土方さん。俺ァずっとここにいましたよ?』
「んなワケねぇだろが!!総悟と二人でどっか行ってただろ」
『!…チッ』
「なーに舌打ちしてんだ、てめェわァァ!!」
土方が怒鳴ってくるのを耳を塞いで聞かぬフリしながら、土方の言葉に先程の事を思い出してしまったせいで赤くなった顔を隠していた。
「それはそうとトシ。総悟の奴がウンコしに行くっつったきり全然戻らんのだが」
「あの野郎、またどっかでサボってやがるな」
今度はあいつか、と呆れてため息を吐く土方に×××がしぶとく反論した。
『だから俺はサボってねェですってば』
「そうだぞトシ。×××だってきっと林檎飴さんに呼ばれて仕方なく…」
「林檎飴さんって何だよ。食べ物に呼ばれてると思ってる時点でサボり以外の何者でもねェだろうが」
「まぁとにかくだ。他の誰を疑おうとかまわんが仲間を疑うことは俺は許さん」
『ほら見ろ、土方コノヤロー』
「……テメー…」
あっかんべーと腹立つ顔をする×××に土方が青筋をたてた。
「俺は総悟を信じる。きっとウンコのキレがもの凄く悪いんだ。俺はそう信じたい!」
『確か神楽がSのウンコはちょー長ェーって言ってたしな』
「そんな信じ方される位なら疑われた方がマシだと思うがな…」