黒豹奮闘記
□第拾六幕
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万事屋を見送る為、真選組の門までやってきた×××。
だがさっきから珍しく何か考えている様子で、一言も話さない。
「じゃあ×××、また万事屋にもくるヨロシ」
「大変っぽいですけど頑張って下さいね」
『あぁ…巻き込んで悪かったな』
「「………」」
突然固まった神楽と新八に、×××はなんだよという顔で二人を見つめた。
「いや…あの…×××さんの口から謝罪の言葉が出るなんて思わなかったんで…」
「きっと明日は槍が降るアル」
『…テメーらいっぺん死んでこい』
×××は新八と神楽を睨みつけるとため息を吐いた。
『…もうどーでもいいから早く帰れよ。俺だって土方さんとこ行かなきゃなんねェんだからよ』
「あ、重要会議がなんとかって言ってましたもんね。すみません。それじゃあ行きましょうか、銀さん」
新八が促すが、銀時は反対にのんびりと×××の横へ並ぶ。
×××が眉間のシワを更に深くしたのは言うまでもない。
「んー。ちょっと俺×××に話あっから先にお前らで帰ってろ」
「?わかったアル。いくヨ新八」
そう言うと神楽と新八は×××に手を振って帰って行った。
残された×××と銀時。
×××は不機嫌丸出しだった。
『なんだよ話って』
「…別になんも?×××と二人っきりになりたかっただけだし?」
『キモ………帰る』
にやけ顔で見てきた銀時に仏頂面で返すと、門から屯所内へと入りかけた×××だったが、そう簡単に銀時が×××を返すはずがなかった。
「逃げられねーぜ?」
『!?、おわっ!』
いきなり腹に腕が回ったかと思うと、×××は後ろにグイッと引き寄せられた。
銀時に後ろから抱きしめられる形になる。
『っ、離せよッ!!』
「嫌だね〜せっかく久しぶりに×××と二人っきりになれたんだし?今からどっか行かない?」
『行くかボケ!!っ、腹触んな!!キモいから!!マジでやめろ!!』
ジタバタと暴れる×××たが、銀時が×××を抱きしめている力も半端なく、びくともしなかった。
その上、腹に回された腕がもぞもぞ動くもんだから堪ったもんじゃない。
「×××ちゃんはウブでちゅね〜今から銀さんが大人の遊びについて、手取り足取り教えてあげましょ…」
『ッ…離せっつてんだろうがァァァ!!』
「ぶへらッッ!!」
耳元で囁いてきた銀時を裏拳でぶっ飛ばした×××は、ゼェゼェと肩で息をしながら銀時から距離をとった。
鳥肌立ちまくりの冷汗だらだらである。
「別にそこまで思いっ切り殴んなくてもよくね!!?」
『殴るわ!!斬られなかっただけでもマシと思えや!!とっとと帰れロリコン天パ!!』
「チッ…なんだよ、ったくよー…へいへい。×××ちゃんは冷たいね〜。まあ今日の所は引き上げるとすっか。……ん?」
『あ゙?』
銀時は立ち上がると×××の頭越しに何かを見てニヤリと笑った。
『なんだよニヤニヤして…』
「別に?じゃーな、×××」
『お…!?』
おう、と返事をしようとした瞬間にまたもや銀時に腕を引かれ、×××は前につんのめった。
そして…
ちゅっ
『!!?』
え?「ちゅ」…?
「フフン、×××の頬っぺたもーらい。じゃーな」
そう言うと銀時は目を見開いて放心している×××の頭をポンポンっと叩き、原チャに乗って去って行った。
てか…ちゅっ!?
『え…え、えぇぇぇぇぇっ!!?』
×××は叫び声を上げると夢中で隊服の袖で銀時にキスされた頬を擦った。
何やってんだ!?アイツ!!
何なんだ!?アイツ!!
前々から銀時は変な奴だと思っていた×××だったが、今日の銀時の行動には正直ついていけない…いや、ついて行きたくないものだった。
『死ねあの腐れ天パァァァァ!!!』
×××は銀時の去って行った方向に、手近にあった石をおもっくそ投げ付けると全速力で屯所内へと戻った。
…沖田に見られていたとは知らずに。