黒豹奮闘記

□第弐拾幕
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バズーカを担いだ土方が声を張り上げ、その両側には近藤と沖田がいた。

後ろに並ぶ隊士達は面子的に一番隊だろう。一番隊以外は別の入口から突入してくる作戦だ。



「攘夷浪士共ォ!!神妙にお縄につきやがれ!!」



土方の掛け声に百以上は軽くいるであろう特効党の攘夷浪士達は沸き立ち、刀を構える。

真選組が突撃して来ないのは×××達が人質に捕られているからだ。

それを知ってか、覆面の男は前のめりに倒れている×××の首を乱暴に掴むと、叫んだ。



「黙れ幕府の犬共がァ!!この人質共を殺されたくなくば大人しく言うことを聞けェ!!それこそ犬のようにな!!」



がははは!!と笑う男を見ながら×××は歯を食いしばっていた。

行動するべきタイミングは今ではない。

そのチャンスに賭けて今はひたすら、かじかんだ手足を少しずつ動かさなければ。



『っ…』


「×××さん…!!」


『大、丈夫、だから…静かに、してろ!』


「っ、はい…っ」



泣きそうなすみれを黙らせ、×××は少しずつ手足に感覚が戻るのを感じながら特効党と睨み合う真選組を見た。

その時、こちらをじっと見ている沖田と目が合う。

×××がニヤリと笑って見せると沖田は何とも言えない、悔しげな険しい顔をした。

…どうしてそんな顔するんだろうか。



「局長の近藤はどこだァ!!」



覆面の男が目を爛々とさせながら声を張り上げる。自分達が有利な状況だと分かっている覆面の男は興奮気味だ。

そのおかげで×××の首を掴む手に力が篭り、いい迷惑なのだが。


すると近藤がスッと前へ進み出た。



「俺だ。貴様らの要求はなんだ!」


「ヒヒッ。簡単だぜ?真選組の解散と局長、テメーの首だ」


『!くそ…ッ』



やっぱりか。

こうなったら一か八かの賭けに挑むしかなさそうだ。

×××は舌打ちすると出来る限り声を張り上げた。



『おい…!』



思いもよらぬ人物が声を上げたせいか、覆面の男は少し驚いた様な顔をした後、ニヤニヤしながら振り返った。

近藤も驚いて「×××…!?」と呟いている。


「なんだァ?まだ痛ぶられてェってか?」



優越感に浸った声で呼び掛けてくる覆面男に嫌悪感が沸き立つのを感じながら、×××は静かに口を開いた。



『…うるせーんだよ。カスみたいな人間がギャアギャア喚きやがって』


「何ィ…?」



覆面の男を睨みつけながら静かに怒りを表わにする×××だったが、内心ほくそ笑んでいた。

上手い具合に挑発に乗ってきている。
ここまでは自分の予想通りだ。



『誰がテメーらなんかに近藤さん引き渡すかよ…誰が解散なんてするかよ…!』


「あ゙ぁ!?」


『誰がテメーらみたいな糞共に真選組渡すかって言ってんだ!!自分の命張って戦う勇気もねェ癖に、イキがってんじゃねーぞ!!』


「んだとォ…!!おい!この女を始末しろ!!人質ならもう一人いるから問題ねェ!」


「はっ!!」



キレた覆面の男は仲間に命じると、血走った目をしながら×××の顔を思い切りボカッ!と殴り付けた。

その様子に、ちょっと挑発し過ぎた気もすると思ったが、まぁ賭けだから仕方ない。



『っく……!』


「×××さん!!」


「×××!!」


「オイオイ、嬢ちゃん…調子に乗ると痛い目みるぜ?」


『フッ…痛い目見んのは、どっちだァ…?』



あまりの痛みに目眩がし、生理的に涙が込み上げてきそうになるが薄ら笑いを浮かべて相手を睨みつける。

痺れるほどの頬の痛みと血の味が口内に広がった。



「フン……やれ」



覆面の男がバッと×××を離すと仲間の一人が刀を構えながらニヤニヤと出てきた。

隣からすみれの叫び声や、近藤の悲痛な自分を呼ぶ声が聞こえる…


もし予想通りに事が進まなければ自分にとってはこの声を聞くのが最後、というわけか。


×××はそんな事を考えながら、ひたと刀を構えるガタイの良い男を見つめた。



「よォく見ていろ!!幕府の犬共ォ!!お前達のお仲間が斬られて死ぬ様をな!!ハハハハ!」


「×××***!!」


「いやっ…×××さん!!」



そして男が刀を振り上げたその時…



「っ…×××ッ!!」



今まで黙っていた沖田の声が×××の耳を掠めた。



『!(総、悟…!!)』



思わず一瞬目を見開く。が、





ズバシャァァァア!!!





無惨にもその男の刀が×××目掛けて振り下ろされた。


 
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