捧げ物

□銀色の賢さ
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「よぅ、大串君」

けだるい声で振り返ると死んだ眼を持つ銀髪の天パ侍、坂田銀時が立っていた。

「げっ、万事屋」

俺は、つい呟いた。
隣にいる総悟が俺の脇腹に肘うちをした。沖田の目が、万事屋を貶すなよ、貶したら殺してやると訴えていた。

「大串君、その出迎え方は無いんじゃないの〜?」

万事屋はそんなに気にすることなく茶化すように言った。

「つか、お前なんで屯所の中にいんだよ。」

そうだった。ここは屯所の中だった。何で、部外者といって良いほどの万事屋が新撰組の屯所の中にいるんだ?
そんな疑問が脳内で渦巻く。

「大串君たちの上司に頼まれたの〜。なんか、勉強を教えてくれ〜って。」

「っ!近藤さんが!?」

俺は驚いて声を上げた。すると、万事屋は俺の目を捉えてニヤリと笑った。

「近藤だけが勉強をするんじゃないよ。
大串君と総一郎君も勉強するんだよ。」


俺の隣で総悟が歓喜のあまり飛び跳ねた。
何がそんなに嬉しいんだ?勉強なんて大嫌いっつーのに。
嫌がる俺を引きずりながら万事屋は近藤さんの部屋に入っていった。

「おう、万事屋。来てくれたのか。」

「その分、たんまりと金もらうから。」

軽い調子で挨拶をした銀時は寺子屋で使うような黒板と、塾生用の机を用意した。
そして、教科書を配りながらメガネをかけた。
妙に様になっているのがムカつく。

「え〜と、今日皆さんが、こうして勉強するようになったのは、新撰組隊士は殆ど、寺子屋に通っていなかったので、戦術の知識はあっても、学問ができません。そうなったら、将来の新撰組がいろいろと心配だから、新撰組TOP3の皆さんだけ、いっぺん勉強してみましょうというわけです。ついでにこれ、近藤が考えたことだから、恨むんだったら近藤を恨めよ〜」

近藤さん・・・。俺達のことをそんなに考えていてくれたのか・・・。
感傷に浸っている俺達に銀時は水を差す。

「ほらほら、そんなことしている暇があるなら勉強するぞ〜」

メガネを指でカチャと掛けなおした。眼が、教師の目になっている。
少しいやな予感がした。
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