虹を築く7日間

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雨が降っていた。











「おい!見つけたか!?」

「いやまだだ。だがこの辺りで消えたらしい。探せばまだいるはずだ!」

「お前は鵠様に伝えろ!俺はあっちを探す!」

「分かった」

「くそっ!必ず見つけてやるからな!!」








男達の声が遠くなる。


「鵠様に伝わったら不味いな…」



波の音が大きくなり船も大きく揺れる。

小さな物陰に身を隠した私は
ため息混じりにそう呟いた。


彼等はこれから沢山の仲間を引き連れ
私を捕らえるだろう。

鵠とはこの船と組織の仕切る長の名だ。

私の逃走が知られれ捕まったら
今後一切逃げられる事は出来なくなる。

だとしたら私はここから
一刻も早く移動しなければならない。





「鶸!!どこにいる!」


自分の字を呼ぶ声が近づく。

私は息を潜め身を屈めた。


今いる場所は2階の倉庫室。
ここを出で階段を上がれば
外に出れる甲板があるはずだ。

私達は滅多に甲板に出ることは無い。

甲板に出ることは
私達にとって非常に危険を伴うからだ。


――ガチャ…

「………」


倉庫室に男が一人入って来た。

もう何十年も前に
心臓が止まっているはずなのに
鼓動が聞こえてきそうだ。

小さな部屋には
波の音と窓を叩く雨の音と
男が辺りを物色する音しか聞こえない。


このままでは見つかる。


積み上げられた木箱の影は
捜索されれば簡単に見つかってしまう。


私は隠れると同時に見つけた
棒を強く握りしめた。

目を瞑り音で男の位置を探る。

まだ遠い。


雨は嵐に変わりつつあるのか
波と雨の音は次第に大きくなる。


男の足音が段々と近づく。

私は片手を木箱に乗せ身を乗り出し
体を一回転させ男の頭上を飛んだ。

「なっ!」

いきなり現れた私に驚いている間に
男の背後に両手をついて着地する。

同時に振り向いた拍子に
男の腹に突きの一撃を入れた。


「うっ……貴様…鶸……」

男は腹を押さえながら崩れながら倒れる。


「悪いね」

いくら不老不死の私達でも
鳩尾に突きを入れれれば
普通の人間と同じように気絶する。


完全に気絶したのを確かめる為に
倒れている男の体を棒で適当につつく。

微動だにしないのを確認すると
私は棒を男のそばに棒を投げ
痒くもないのに頭を掻いた。
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