Special1

□『ラヴレター』
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俺が我儘を言うのは冬獅郎だけ、俺の我儘を聞いてくれるのも冬獅郎だけ。

唯一無二の、掛け替えのない大切な大切なひと。

「冬獅郎、遊んで」
「見てわかんねぇのか、仕事中だ」

俺の顔を見ることもなくそう吐き捨てると、冬獅郎はまた机の上に詰まれた資料に目を落とした。

せっかく学校が休みだから冬獅郎に会いに来たってのに、全然構ってくれない。俺より仕事の方が大事ってわけ?それくらいわかってるけどさ。

「あっ、間違えた」

冬獅郎が間抜けな声を上げる。俺はソファから跳ね起きて、冬獅郎の机を覗き込んだ。

「最悪だ、この書類もう予備がねぇのに」

どうやら冬獅郎は署名する欄を間違えたらしい。苗字まで書いた所で間違いに気づいたようだった。冬獅郎は頭を抱え、大きな溜め息をついている。

「馬鹿だな、冬獅郎。他の隊長も同じの持ってんなら、コピーさせて貰えばいいじゃん。探せばまだ白紙の人だっているだろ」

俺が冬獅郎の肩をぽんと叩きながらそう言うと、冬獅郎はだらしなく口を開けて俺を見上げた。

「…こぴい?何だ、それは」
「呆れた。こっちにはそんなもんすら無いのかよ」

眉を寄せながら首を傾げる冬獅郎。机に積まれている書類を見ると、今日中に終わらせられるのかと言いたくなるほど、まだ大量に残っている。乱菊さんは毎度の如く、本来いるべきであるここにはいない。

「なあ、俺が他の隊長からその書類借りてあっち戻ってコピーしてくるから、冬獅郎は他の書類片づけとけよ」

冬獅郎のために出来ることは何でもしたい。俺に出来ることなんて数えるくらいしかないんだろうし。

冬獅郎は任せて大丈夫なのかと不安そうに俺を見たが、大丈夫、出来るからお願い手伝わせて、と目で訴えると、ようやく首を縦に振った。

「じゃあ頼んだぞ。よろしく頼む」
「終わったら遊んでくれる?」
「終わったらな」

俺はうきうきしながら十番隊の執務室を後にした。





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