参加企画、作品堤出

□仄恋ゆるり
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ここは神聖ブリタニア帝国、エリア11
第三皇女である、薫・リ・ブリタニアは、騎士の緋村剣心と共にトウキョウ租界に来ていた

「皇女殿下」
「二人きりの時は?」
「か…薫殿」
「正解!」

騎士叙任式を終えた、その夜
“桜が見たい”と頼まれた剣心は、こっそり薫と一緒に城を抜け出した
剣心は騎士服、薫はドレスのままで

この服装では目立つ為、貨物を運ぶ輸送トラックに乗っている途中だ
安全な運転席ではなく、外の積み荷と一緒に

「このようなこと、コーネリア殿下に知られたら……」
「お姉様には私から伝えておくから心配いらないわ」

あくまで能天気な薫に、剣心は溜め息を吐きそうになった
次の言葉を聞くまでは

「それに…何かあっても剣心が守ってくれるでしょう」

剣心は自分の耳を疑った
“そんなにも信頼してくれていたのか”と、心が満たされた気分になる

「勿論、拙者は薫殿に選ばれた騎士でござる」

薫は安心しきった表情で剣心を見つめる

なんだかんだで目的地に到着したらしい
剣心は薫を抱き抱え、信号で止まっている隙に、トラックからひょいと飛び降りた

「ここでごさるか」
「うん」

満開の桜の花びらが、澄み切った空気の中…月の光に照らされている
今まで見たことのない、幻想的な景色が目の前に広がっていた

剣心は抱き抱えていた薫を降ろす
薫は桜の木の傍に駆け寄り、はらはら舞うの花弁を掴み取ろうとする

黒髪を靡かせる、御目麗しい皇女殿下
しばし、夜桜と薫に見とれる剣心

「今日ここへ来たのは、剣心に伝えたいことがあるから」

剣心へと振り向き真面目な顔つきになる

「それで拙者を誘ったでござるか」

薫は剣心の問いに頷くと、目の前にいる自分の騎士を睨め据え、衝撃的な言葉が響いた

「剣心、私を好きになりなさい!」
「はい!……おろ?」

咄嵯に返事をしてしまったが、すごいことを言われたような気がする

「そのかわり、私が剣心のことを大好きになるから!」
「薫殿…?」

剣心は呆然としてしまう。けれど、薫自身は動じず発言を続ける

「剣心、あなたの頑ななところも、優しいところも、悲しい瞳も、不器用なところも、猫に噛まれちゃうところも全部!」

すべてを好きになるわ。――だから

「だから自分を嫌わないでッ!」

必死に、切なる願いを込めた思いが剣心に届くよう、はっきりと告げた

自分を責めてばかりいないで
自分を嫌いになることで逃げないで
自分を追い詰めるという償い方をしないで
ねえ、剣心。私はあなたが好きよ

剣心を見つめる薫の瞳は悲しく揺れていた
剣心はハッと気付いた

(そうか…。かえって心配させてしまったのでござるな…)
まったく薫殿は!

「いつもいきなりでござる!」

困ったような…だが、柔らかい声が剣心の口から漏れる

「出会った時も、皇女だって名乗った時も、学校を決める時も、拙者を騎士に選んだ時も…いつだって…」

君はいきなりだった
驚かされて気がつけば、君のペースに巻き込まれていた
でも、不思議とそれは心地よかった
君の傍にいることが楽しかった
剣心が薫に笑みを見せると、薫も同じように微笑みを返した

「そうでごさる…いきなり、いきなり…気づいたでござるよ」

たくさんたくさん悩んだのに、たくさんたくさん迷ったのに、でも…気づいたことはとても当たり前のことだった
伝えたかったことは最初からひとつだけだったのだから
何もかもいきなり
気づくのも、願うのも、求めるのも、描くのも
それはいつもいきなり

心が導くままに人は選び進むのだから、万全の準備なんてする暇もない

――でも

「そのいきなりのたびに、拙者は扉を開けられた気がする」

いきなりだからよかったんだ
深く考える前に進まざるを得なかったから、進んだんだから、いい結果に結びついていたんだ

ありがとう
導いてくれて、背中を押してくれて……ありがとう
感謝の言葉だけが湧いてくる。だから――

「これからも愛するでござるよ。薫殿を」

それから数カ月後

薫は“行政特区日本”を作ることを宣言した

イレヴンやブリタリア人と差別されることのない、皆が自然と笑顔になれる…優しい温かい居場所を築く為に





コードギアス〜反逆のルルーシュ〜パロ

すごく長くなった上に、ギアス知らない方には全然わからない…!
も、申し訳ありません

ですが…「騎士姫」な剣薫を妄想して頂ければ幸いです

全ての剣薫ファンの皆様に愛を込めて

    ステラリュヌ拝




お題拝借、ニルバーナ様

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