キラフレ愛祭

□彼は何も言わなかった
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今でも、思い出す。



焔のような紅い髪、
笑うと薔薇のように可
憐だけれど、怒ると油を注いだ炎みたく、激しかったフレイを。



そんなフレイを愛していた。炎のような彼女との恋は。


もちろんプラトニックな筈もなく、熱く身を焦がした。

無論、まだ火傷は治らない。



今でも僕は思い出す。



「貴方の
心臓の音、気持ち悪い。」

フレイは僕の左胸に耳を這わせた。



「なかなか死なない、音がする」


フレイはそういうとキスをしてくれた。そして、縺れ合い、荒い動物めいた呼吸した。



二人は情
事の後疲れて、寄り添い眠る。
だけど、その日の僕は起きていた。
深い
呼吸を繰り返しながら。ぼんやりと瞼の下に広がった闇を見つめながら。


「だいっきらい」

僕がすっかり寝息をたてると聞こえる。

静かに、フレイは呪いの言葉を呟く

「だいっきらいだいっきらい」


それは小雨のように、
無機質な部屋に静かに響く。

フレイは起き上がり、僕の顔を覗き込んでいる。

そして、僕の頬に暖かいものが落ちてくる。


「消えてしまえばいい」

その言葉は、フレイが僕に呟く「愛している」にとてもよく似ていた。


フレイの細い指が僕の首にしなやかに、白蛇のように 巻き付いた。

それでも僕が目を開けることはない


「キラ、なんかっ」


彼女はゆっくりと、僕の首を締め付けた。

まるで長い長いキスをしたとき みたく、頭が白くぼおっとしてきた。

何秒もたたずに、僕の生命は理性に反し、死にたくないと暴れる。

だけど僕は動かない。


「キラなんかキラなんか」


フレイは懸命に僕の首を締めた。

苦しい苦しい苦しい

それでも僕は目を開けない。


何秒もたたないうちに
僕の体は悲鳴をあげた。

「くっ」


あまりに苦しく、眠ってる筈の僕は顔を歪めた。

フレイが加える圧迫が不意に緩んだ。



「キラっ」


彼女の手が僕の首から離れる。


ゴホッゴホッゴホッ

僕は激しく咳き込む。

だけどそれでも目を開けない。


「キラッ、キラッごめんなさいごめんなさい」

彼女は泣きじゃくり、僕の背を擦る


「キラッ、ごめんなさい、あたしっ」


彼女は美しい顔を歪めて泣いている。目を閉じていたって、わかる。


「キラ、キラ、起きているんでしょ?ごめんなさい、ちがうの、だって」

「ねぇ返事してっ」

それでも僕は目を開けない。


「キラァッ」


フレイは僕に抱きついた。



ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…おまじないのように唱える。



(フレイならいいと思った)




「キラの馬鹿馬鹿馬鹿」

「だいっきらいだいっきらいだいっきらい!」



彼女は泣き叫び、咳き込んでいる僕を打つ。


「死んでは駄目!だってあたし、やっぱりキラが…」



そうやってもう一度僕の背を擦る。

僕は落ち着きを取り戻し、寝息をたてた。



「キラ、聞いてる?」


僕はそれでも目を開けない。

そして、何も言わない。

「キラ、キラ、大好き。聞いてる?聞いてるの?」


彼女は不安になって僕の背に抱きつく。



(フレイなら、)



「キラ、やだっ返事してよ!」



(いいと思った。)



(捧げても、いいと、思った)



「…返事してよ…ねぇ」





彼は何も言わなかった



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