恋の蕾

□恋の蕾X
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辺りは大分暗くなり、提灯(チョウチン)の灯りと出店の光で、夜とは思えないほどの明るさ

会場に近づくにつれて、人が多くなり前に進み辛くなる




『おチビ2人、手を貸しなさい』

ト「おチビって言うなよ」

天「なに? 姉ちゃん」

『諸君等が迷子の子猫ちゃんにならないように、手を繋いでおくの!』




両手に男子・・いや、ちびっこ? を引き連れ、人混みへと紛れていった













出店を回り、ほどなく一時間

悟天、トランクスの手には、沢山の食べ物




天「あ! トランクスくん、あっちにりんご飴があるよ!」

ト「本トか!」




まだ食べる気ですか、お子ちゃま達よ


走って行く悟天を追いかけようとするトランクスだが、フッと後ろを見た




ト「コウ?」




後ろの方にある階段の手摺りに捕まって立ち往生しているコウの姿
首を傾げたトランクスは、コウの元に駆け寄った




ト「コウどうしたんだよ、りんご飴買いに行くぞ?」

『あ、トランクス』




なんだか辛そうな顔に、トランクスも心配になった




『コレ、履き慣れてないから足が痛くて・・・』




下駄を指すと、足の甲には擦り剥いた様な傷が見えた
血は出ていないが、赤くなってしまっていて痛そうだ




『私はここで待ってるから、2人で買っておいで』

ト「コウ・・」

『心配しないで、大丈夫だから!』

ト「わかった! 絶対ここにいろよ!」

『うん』

ト「コウの分のりんご飴も買ってくるからな」

『私、チョコバナナがいい』

ト「わかったよ!」




トランクスは、上手く人の間を抜けて行き、あっと言う間に姿が見えなくなった

小さな背中を見送ったコウは、そのまま階段に腰を下ろした
下駄を脱ぎ、絆創膏で応急処置をほどこした




『これで大丈夫かな』

男「ねぇ彼女、1人?」

男「俺らと一緒に出店回らねぇ?」




前を見ると、コウより少し年上だろうか
少年2人が声を掛けてきた




『1人じゃないから』

男「あれだろ? チビが2人いんだろ?」

男「あんなチビほっといてさ、俺らと遊ぼうぜ」




と、コウの手首を持ち、立ち上がらせた
そして連れ出そうと、一歩足を踏み出したところ




ト「ちょっと、兄ちゃんたち! 何してんだよ」

男「ちっ・・・もう戻って来やがった」




両手にりんご飴とチョコバナナを持ったトランクスが戻って来た
やや後方には、りんご飴の他におまけが沢山増えた悟天がいた




男「ふん! ガキはガキで、向こうで遊んでろ!」

ト「オレ達とあんま年変わんないくせに」

男「うるせー! ガタガタ言ってると、痛い目に合わせるぞ!!」




どうぞ、と言わんばかりに少年2人をバカにしたような顔をするトランクス
それに逆上する少年2人

1人がトランクスに殴りかかってきた




バキッ




トランクスの拳が、少年の左頬にヒット
その場に倒れた




ト「あぁ、言っとくけど
コウは、自分より弱いヤツに興味ないから」



いや・・
そんなことは、ないけど・・・




勝手な解釈をするトランクスに、心の中でツッコミつつも、成り行きを見ていた

少年は気絶した仲間を連れて、逃げる様にその場を去って行った

そのスピードの速さに、呆気にとられていると、トランクスから声を掛けられた




ト「大丈夫か? コウ」

『え? あ、うん、大丈夫』

ト「ったく、気をつけろよな」

『大丈夫だよ! いざとなったら、今みたいに一発食らわせれば、OKだよ!』

ト「はぁー・・」




全然わかっていないコウに、溜息が出てしまう




その無防備な所を、どうにかしてほしいんだよ・・・




と毒づくも、声に出さなければコウに届く訳も無く
溜息として出てしまったのだ










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