短編
□守術
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師走に入り、
寒さが一層厳しくなったある日のこと
千鶴が倒れた。
倒れたと言っても、家事の途中でバタリと倒れたわけではない。
いつものように千鶴と一緒の布団で目が覚めた。
しかし、あまりの寒さに僕は温もりを求めて思わず横で眠る千鶴を抱き寄せる。
抱き寄せた瞬間伝わる温かさにほっと心が落ち着くも
温かすぎる・・・いや、熱すぎる
異常な体温に違和感を覚える。
「千鶴…?」
布団から少し体を起こし、名を呼びながら訝しげに彼女の顔を覗き込む。
ほんのり赤みを帯びた頬。
小さく可愛らしい口からは苦しげな吐息が漏れていた。
額に手を触れ、その熱さに眉間に皺が寄る。
「千鶴…?大丈夫?」
呼びかけてみれば、ゆっくりと瞼が持ちあがり、
熱で潤んだ大きな瞳が現れた。
「そうじ…さん?」
「すごい熱だ」
着物の袖で、額の汗を拭ってあげる。
すると千鶴は小さく「すみません」とつぶやいた。
そんな千鶴に一言「今日はゆっくりお休み」と告げ、
僕は彼女の看病をすべく布団を後にする。
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