フリリク

□リクエスト
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朝、目が覚める。



なんだ?なにかがおかしい……。


時計を見れば朝の5時30分。
上半身だけ起こし、頭を押さえながら部屋を見渡すが特に変なところは見当たらないいつもの汚い部屋だ。


気のせいか……?





いつものようにジョギングに出掛け、部屋に戻ってきてもその違和感は拭えなかった。

顔を洗っていると凡が起きてきた。



「つくし、おはよう。」


「あぁ、おはょ。」



ん?再び違和感を感じた。今度はさっきよりも大きく。

考え込む俺に心配した凡が顔を覗き込んでくる。



「どうしたんだ、つくし。」


「ぼん、にゃんかおかちい…っ!!?」



バッと自分の口を両手で押さえる。

なに今のっ?!!



「………つくし?」


さっきの表情のまま固まった凡がこちらを見てくる。
そして、何かに気が付いたように走ってキッチンに入っていった。


そして、5秒も経たない内に戻ってきてずいっと何かを俺の顔に突き付けてきた。



「つくしこのクッキー食べたのかっ?!!」



凡が持っているそれはクッキーの空き箱。

それは確かに小腹が空いた俺が昨日開けたもので。



こく


「やっぱり!!お前これは俺の作った毒入りクッキーなんだよ!!」


「んにゃもん、おいちょくなっ!!」



思わず叫んでしまったが、自分の声を改めて聞いてみると吐き気が……。



「にゃんでしょんなものちゅくったんだょ。」


「そりゃあお前、あの木戸田に食べさせて笑い者にするために決まってるだろう。」



「…………凡。」




あの木戸田先輩がこんな赤ちゃん言葉を?
それは、ちょっと見たいかもしれない……。



「まさか、つくしが食べるなんて……。」


「どうしゅんだよ。」



























どんな緊急事態が起きようと、学校を休むことは出来ない。



「あ?なんだ染井、風邪でも引いたのか?」


こく



クラスに着けば、珍しくも朝から穂隅先生が教卓に立っていた。

マスクをしてクラスに入ってきたつくしを見て話し掛けてくるが、返事をしないつくしに穂隅先生が眉をひそめる。

代わりに凡が答える。



「朝から声が出なくて、今日1日は喋れませんよ。」

「あそ」


「なんだ染井、声が出ないのか?」


「……………土井。」




いきなり現れた土井に凡がげんなりにた顔で見る。

凡が口を開こうとしたとき、教室のドアが開き2人の男が入ってきた。



「あっおはようお友達君と平凡君。みんなのアイドル道鷹君だぞっ★」



パンッ



「ギャッ!!」



叫び声を上げてすっ転ぶ空王の隣。その右手に持っているそれからは白い硝煙と火薬のにおいが。


かなりの至近距離から打たれた銃弾は空王に当たることはなく、窓際で宿題をしていた生徒の顔スレスレを横切った。

生徒はそのまま気絶した。



「おま夜草っ俺を殺す気か?!!」


「うん。ごめんね、夜草くん。………ちっしくじったか。」


「しくじったって何?!」


「おはよう、つくし。」


「って、シーカートォ!!?」




空王を完全に無視した夜草が隣にいる凡や土井には目もくれず真っ直ぐつくしの前にやってくる。

しかし、こちらを向いたまま困ったようにオロオロするつくしに夜草が首を傾げる。



「残念だけど今日はつくし声でないよぉ。や・く・さ・く・ん。」


「あぁ、いたんだ平君。いつもなら無視したいこと山のごとしなんだけど、声が出ないってどういう事だい?」



かなり嫌そうな顔で凡に向き直る夜草。

凡も負けじと嫌そうな顔で答える凡。



「つくしは風邪ひいたの。だから声が出ないの。」


「風邪っっ?!!!」



夜草の顔が驚愕で歪む。

そして勢いよくつくしに向き直り肩を掴む。


ガシッ



「っ?!!」



「熱はっ!!熱はないのか?!どこか痛いところは?!声が出なくなるまでなにしたんだ?!はっ……まさか。」



夜草の顔がみるみる青ざめていく。

つくしの肩を掴んでいる腕がわなわなと震える。



「誰かに一晩中喘がされたせいで声がっ……?!」



とんでもない勘違いを大声で叫ぶ夜草に、凡が止める間もなくつくしが口を開いた。





「しゃれてにゃいっ!!」








あ。


気付いたときにはもう遅かった。教室内は静まりかえり、夜草はポカンと口を開けている。



「……………つくし。」



凡が呆れたように頭を押さえている。



「だってぇ……」



本当に喋れないならまだしも、喋れるのに喋るなというのはむちゃだ。




「…あにょ、やくしゃ?」


未だ無言のままでリアクションのない夜草を見上げる。

そこには顔を真っ赤にして穴が開くんじゃないかって位に俺を凝視してくる夜草が。




「つくしっ!!」


「うっわ」



夜草が口を開いたと思った瞬間、体が宙に浮く。


景色が回り、気付けば視界いっぱいには床。自分の腰には腕の感触が。



俺担がれてるっ?!!




「何があったのかは判んないけど、取り敢えず俺の部屋にっ!!」


「そうはさせるか変態っ!!」



俺を担いだままで教室から逃走しようとする夜草に凡の邪魔が入る。



「ちっ、退いてくれないかな平君。」


「誰が退くか。」



力の差は歴然、だがしかし夜草はつくしを担いでいるというハンデをおっているため今の状況では少しではあるが凡の方が有利だろう。


目の前の凡に気を取られていて周りへの警戒が緩んでしまった夜草、その一瞬の隙をつきつくしの腕に何かが絡み付いて思い切り引かれる。



「ギャッ」


「なっ!!」



腕に激痛が走り、再び体が浮く。


落ちるっ!!


























ボスッ






覚悟していた衝撃は訪れず、代わりに柔らかい感触が俺の体を包み込んだ。



「さすが染井。赤ちゃんプレイなんてマニアだね。」


いやぁああああっ!!?




俺を抱き留めたのは、なにわのメガネボーイ、土井 笑澄だった。


今の状況でこいつが傍にいるとか嫌っ!!

だったら生徒会室とか風紀委員会室をコンコンダッシュした方がマシッ!!でも寮長室は死んでも無理っ!!




なんとかして此処から逃げ出さなければ、もがいていれば。



いきなり土井が俺から離れて後ろに飛び退いた。


そして誰かに腕を掴まれ、引っ張られる。




ポスッ



後ろから腕ごと体を抱き込まれる。

自分よりも高い位置にあるであろう相手の顔を確認するために顔をそのまま上にずらす。



「なんか面白いことになってんじゃねぇか、染井。」


ニヤリと笑うは我らが担任様。



「俺も混ぜろよ。」


「「「却下」」」



俺が何かを言う前に、凡、夜草、土井の3人がハモる。

夜草と凡が顔を見合せ嫌そうに顔を顰める。土井は変わらずニコニコと笑っている。


なんだこのカオス。


取り敢えず先生に放してもらおうと先生を見上げる。



「あにょ。しぇんしぇ、はにゃして。」



きもっ!!

しぇんしぇって何?!



自分の口から出た言葉に衝撃を受けつつ、手が放れるのを待つ。


が。



一向に放れる気配がない。




「しぇんしぇ?」



不思議に思い、再び呼んでみる。すると先生様の目の色が一気に変わった。


ビクッ




「そうか。これはアレだな、うん。ごめんな染井、一回目で気付いてやれなくて。」



髪を掻き上げてため息をつくナルシスト教師。それが様になっているのが若干ムカつく。


てか何が。




「ベッドに誘ったんだろ?たく、そんなに突っ込んでほしいなら直接言ってくれれば………」




ドスッ



「っ!!!!!!!」




俺から手を放し蹲る先生様。


それを目撃したクラスの生徒たちがサッと青ざめる。



「出た、必殺"股間殺し"。」


「しかも今肘で打ったよな。」


「あれは暫く動けないぞ。」




クラスにいた生徒が皆、あの土井でさえも自分の股間を押さえる。



皆が穂隅先生への同情で注意が逸れたのを見計らいドアの外に飛び出た。



「つくしっ!!?」



後ろから追いかけてくる気配がしたが、俺は死ぬ気で走った。




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