長編
□ぬらりひょんの決断
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『リクオに
三代目の
代紋を譲る』
「え…」
「……は…?」
「今……何と…」
「…おじいちゃん?」
ぬらりひょんから発せられたその言葉に、皆驚きの色を隠せない。
それもそうだろう。
妖力もなく、ひ弱な人間の、それも幼い子供に…妖怪を束ねる総大将の証たる代紋を授けようなどと、正気の沙汰とはとてもではないが思えなかった。
「まあ、正式に譲るのはリクオが十三になってからと思うとる」
「そ、総大将!?正気ですか!?」
「リクオ様は未だ妖怪変化すらした事がないと聞き及んでおりますが…?」
「いくら総大将の血を引いていても、人の子では!」
「今はまだ唯の人間の子供じゃが…なぁに、十三になる頃には立派に妖怪の、この儂の血が現れるじゃろうて!それまでリクオを三代目候補とし、若頭に任命する!」
ぬらりひょんがそう高らかに言い切ると、大広間に居た妖怪達は皆ざわめき始めた。
如何なぬらりひょんの決定と言えど、納得しかねると誰もが思い、反論の言葉を探していると。
「総大将。お聞きしたい事が御座います」
それまで一言も発しなかった牛鬼組の組長、牛鬼が静かに口を開いた。
ざわつき、騒がしい中にあってもその声は良く響き、誰の耳にも届いた。
「何じゃ」
「もし…もしも、リクオ様が十三の年までに妖怪の血に目覚めなかったら、如何なさるおつもりで?」
「その時は、誰か他の者に譲るほかあるまいて」
「…誠ですね?」
「二言は無い」
「ならば、私は待ちましょう。リクオ様が成人なさる、その日まで…」
「うむ。他に意見のある者は居らぬか!?」
そう問われるも、正面から堂々とぬらりひょんに意見できる者は居らず、皆黙ってしまう。
「無いようじゃの」
それを承知の上で、ぬらりひょんは畳みかけるように話を進めていく。
「リクオが成人する十三の年までに妖怪変化をしたならば、三代目の代紋を正式に譲るものとする!それまでリクオを若頭の位置に置く。良いな皆の者!」
戸惑いを隠せない者達が殆どだったが、ぬらりひょんの言葉を撤回させる勇気も納得させるだけの知恵も無い面々。
そうして、ぬらりひょんに押し切られる形でリクオは若頭に任命されたのである。
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