□結界師□

□神童
2ページ/2ページ



その時はよく分からなかったのだが、正兄は泣きたいのを我慢していたのだと思う。
悲しそうな、痛みを堪えるような…そんな表情だった。
幼心に、正兄を自分が傷付けたのだと悟った俺は、その後修業が始まるまで誰の前でも結界術を使わなかった。
使えないフリをした。
俺が出来ないフリをし出すと、周りは残念がったが嘆きはせず、正兄はホッとしているようだった。
よそよそしかった態度が元に戻り、いつものように接してくれた事もあり、自分が出来ないフリをすれば正兄は傷つかないのだと悟った。
結界術以外でも他の人より出来ないフリをし出すと、正兄はいつも自分を構ってくれた。
演じる事は疲れるし、大変だけど、正兄のあんな顔を見たくないが為に、幼い俺は頑張る事にしたのだ。

"三つ子の魂百までも"

時折そんな名言が浮かぶ…あれから11年経ち、今も続けているこのフリに、後悔がないと言えば嘘になるが、今更真実を告げる気にはなれない。

───そう、何か切っ掛けでもない限り、絶対に─────。


end...
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ