*Dream*

□06
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「ヨーテリー!『ふるいたてる』!」

ヒオウギシティに最近出来たトレーナーズスクール内にあるポケモンジム。

そこではジム戦が正に行われている最中だ。


「『ジム戦…お願いします』」

朝一番にやって来た挑戦者。

新人トレーナーが初めて挑戦する最初のジムなだけあって早朝や夜遅くまで挑戦者は耐えない。

その事にチェレンは改めてジムリーダーの大変さを身に染みながらも

(だけど、ジム戦をする事によってポケモンとトレーナーが絆を深めるキッカケになれば良い)

その挑戦者はバトル開始からポーカーフェイスのまま淡々と自分のポケモンに指示を出している。

ヨーテリーが『ふるいたてる』を使った瞬間。

「…………」

ポーカーフェイスを浮かべていた挑戦者の口元に初めて感情が現れたのだ。

「ルカリオ、ヨーテリーに『はっけい』」
『御意』

ルカリオは指示を聞くなり真っ直ぐと此方に突っ込んできたものの何故か寸前でルカリオが宙を舞った事に

(攻撃を止めた?いや、もしかしたらこちらを油断させる作戦かもしれない…)

チェレンが予測もしていなかった相手のルカリオの行動。
ヨーテリーも相手のルカリオの出方を伺っているのか尾をピンと立てている。

(だけど、ポケモンが予想外の動きをしたらいくら何でも…少しは動揺は見せる筈だ)

ルカリオに指示を出した挑戦者であるトレーナーはそんなルカリオの予想外の行動にも全く動じていない。

「…………………」

まるで、それも全て"想定内"だったかの様に宙を舞っているルカリオを見上げると


「ルカリオ、…否、『ルート』……そろそろフィナーレだ」

そう紡いだ瞬間。
宙を舞っていたルカリオが急降下をし始めた事に

「!ヨーテリー!避けて!」
『!』

此方に向かって急降下してきたルカリオにヨーテリーは後ろに下がったものの

『その行動、既に予測済みです』

そんな声と共にヨーテリーの背中に手をついたルカリオ。
ヨーテリーの身体を使って一回転をしたその瞬間。

『!』

『はっけい』の攻撃がヨーテリーを襲い目を回してその場に倒れたのだ。

『きゃう〜〜〜ん……』

目に渦巻き模様が出ており、少し離れた所でルカリオの華麗に着地をする音。

「…………………」

ジム戦に負けたにも関わらず
何故かチェレンの口元には自然と笑みが浮かび

「うん…完敗だよ。」

何故だが妙に清々しい気分だった。
久しぶりにトレーナーとしての気持ちを思い出したのだから。


「これがジムリーダーに勝利したジムバッジになります」

チェレンは男にベーシックバッジとわざマシンを手渡すと男はそれを無言で受け取りバッジケースに収めてわざマシンを鞄に仕舞う。
ベルトに着いていたモンスターボールを手にするなり

「有り難うな、ルート。ゆっくり休んでくれ」
『お役に立てて光栄です』

ルートと呼ばれたルカリオが赤い光と共にボールの中へと戻っていった。
男はベルトにボールを装着すると

「次のジムはタチワキシティ…か、この様子なら昼に」

そう呟いたものの何処か男の様子がおかしい事に

「…?」

ジム戦で疲れただけなのかなと思っていたものの背を向けて男が歩き出した瞬間。

「……………、」

男が力無くその場に倒れたのだ。

「え!?ちょっと君、大丈夫かいっ!?」

まさかの非常事態にチェレンが慌てて男の元に駆け寄って支えながら身体を起こすとぼんやりしているその顔は昨日出会った人物と瓜二つのだった事に目を開いていると


ぐぅぅぅ〜


辺りに響き渡ったのはお腹の虫の音。



「…………へ?」

その事に呆気に取られたもののその音は明らかに今倒れている男の腹部から鳴っていた。
男はぼんやりとした様子でチェレンに


「………お腹………空いた……」


そう呟いた事にチェレンは2度目の呆気に取られたのは勿論、言うまでもない。



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