*Dream*
□07
1ページ/14ページ
『今日はミナミにプレゼントがあるんだ』
いつもの様に仕事から帰って来た父親が手にしていたのはモンスターボール。
父親のパートナーであるミルホッグが入っているボールにしては真新しいモンスターボールだった事に疑問を感じながらも
『ぷれぜんと?』
その問いに父親が笑顔で手にしていたモンスターボールを投げると開閉音と共に出てきたのは
『みゃあ!』
しょうわるポケモンのチョロネコだった。
着地して目の前に居るミナミを見上げるチョロネコに
『!チョロネコだぁ!』
ミナミの目がキラキラと輝いた。
未だにポケモンを持ってないミナミにとっては父親のミルホッグ(当時はミネズミ)が当時は羨ましくて仕方なくて幼い頃は自分もポケモンが欲しいと強請っては両親を困らせたりした。
月日は流れてミナミも今年で10歳。
ポケモンと一緒に旅をする事が出来る年齢になったのだ。
『ミナミもポケモンと一緒に旅に出れる年齢になったからな。本当は自分でポケモンを捕まえた方が喜びも倍増だがこれは父さんからミナミへの新人トレーナーとしてのはなむけだ!』
『はなむけ?』
首を傾げるミナミにそのやり取りを見ていた母親がキッチンから出てきて
『要はお父さんからのプレゼントって事よ!』
母親の言葉にミナミは華を咲かせた様な笑顔を浮かべて
『有り難うお父さん!私、お父さんがゲットしてくれたチョロネコと一緒に頑張るね!』
お礼を言って目の前のチョロネコを抱き上げてから笑顔で
『初めまして、チョロネコ。あたしはミナミ!これから一緒に頑張ろうね!』
『みゃあ♪』
ミナミの言葉に応える様にチョロネコが一鳴きしてミナミの頬をペロリと舐めたのだ。
父親がプレゼントしてくれたパートナーであり友達であり大事な家族だったチョロネコ。
『みゃあ〜〜!』
自分に向かって鳴きながら
脇に抱えられたチョロネコの姿が脳裏から離れない。
「………………」
チョロネコが見知らぬ男に奪われた。
暗くなり始めてたのであまり恰好は解らなかったが印象に残ったのは胸元のエンブレムにあった"P"の文字。
「…チョロネコ」
その場に座り込むミナミの手にはチョロネコが付けていたブレスレットの飾りとして着いていた薄紫のフリルが付いたリボン。
以前、シンオウに住んでいる親戚が遊びに来た時にポケモン用のアクセサリーの作り方を教えて貰ってミナミが頑張って作ったアクセサリーでありチョロネコもお気に入りの物だ。
「っ…チョロネコ…チョロネコ!」
自分に向かって鳴き叫ぶチョロネコを前に追いかけることも出来ずに手を伸ばすことしか出来なかった自分が情けなくて悔しくて涙が止まらない。
「ごめんね…ごめんね…、チョロネコ…」
チョロネコに対して何度も謝罪を紡ぐものの溢れ出す涙は止まらずに頬を伝い地面に小さな染みをいくつも作っていく。
「…おい、どうしたんだ?」
頭上からそんな声が聞こえて涙目のまま顔を上げると自分を心配そうに見ていたのはツンツン頭のミナミよりいくつか年上の少年。
涙目のミナミに視線を合わせる様にしゃがみ込んで
「どっか痛いのか?それとも」
「っ…チョロネコが…私のチョロネコが変な人に…」
そう言ったもののそれ以上は言葉にならずに涙がジワリと滲み視界が揺らいだ。
.