黒籠

□リーベの祝福
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「宮地さん、お願いがあるんですが」


偶々オフが被り、宮地は黒子の家に来ていた。
黒子の隣に並んでDVDを見ていた宮地は突然話しかけられ、大きな目をぱちくりとさせながら黒子の方を見る。


「なんだ?」

「勉強を教えてください」

「は?」


黒子は真剣な顔で(というかいつもの真顔で)宮地を見ていた。宮地はと言うと、なんの脈絡もないお願いに困惑顔になる。


「もうすぐテストなんです」

「おう」

「先輩達も結構ギリギリらしいんです」

「おう」

「火神くんは馬鹿ですから当てにできませんし」

「……おう」

「でも僕には宮地さんという心強い彼氏がいるので」

「……」

「勉強を教えてください」


話を聞いて宮地が真っ先に思ったことは「火神かわいそうだなあ」だった。
誠凛には3年が存在しない。やはり同校に教えてもらえるのがベストなのだろうが、黒子に頼られてることが宮地は素直に嬉しかった。


「別にいいけど」

「本当ですか」


了承すると黒子の顔に微かに笑みが混ざる。黒子は立ち上がり、いそいそと勉強道具を持ってまた宮地の隣に腰をおろした。


「最近練習試合が多くて授業中に寝てしまって。でも誰も僕に気付かないから起こしてくれないんです。」

「で、そのまま授業に置いてかれたのか」

「先生には申し訳ないですが眠いものは眠いです。せめて起こしてほしいです。」


切実な響きがこもっている黒子の言葉に宮地は存在感が薄すぎるのも考えものだなと思った。
黒子が持ってきたのは英語だった。他の授業は何とかついていけているようだ。


「ん?てか英語って火神に教えてもらえばいいんじゃねえの?」

「火神くんは教えるの下手過ぎです。何言ってるのか分かりません。」

「ああ、うん……それっぽい……」


なんだか擬音が多そうだ。
当人からしてみれば、授業でやっているのはごく当たり前のことなんだろう。今更文法だのと言われても困るのだ。


「じゃ、これからみっちり英語だな。俺が教えるんだからちゃんと高得点とれよ」

「任せてください」



***



『宮地さん、今日あいてますか?』


黒子のテストが終わり、宮地のもとに一本の電話がきた。
秀徳もテストが終わったばかりのため、部活は自主練になっている。
自主練を早めに切り上げることを告げて電話を切った。

練習を終わらせ体育館を出る。体育館からは後輩達がボールを打つ音が聞こえていた。
校門で待っていると言われたが黒子の姿が見当たらない。


「宮地さん、ここです」

「!?おっ、おまっ、おまえ驚かすな!」


端っこの方に座る黒子に声をかけられ、宮地が飛び上がる。黒子は拗ねたような顔で宮地を見上げた。


「驚かしてません、ずっとここにいました」

「う……悪い……」


変わらない存在感に宮地は小さく謝る。
それより、と立ち上がった黒子は宮地に一枚の紙を見せた。


「見てください」

「え?……あ、え?92点!?」


出されたのは黒子の答案用紙だった。その右上には確かに92と書かれている。
正直な話、ここまで高い点数を取れると思っていなかった宮地は素っ頓狂な声をあげた。
黒子はどこか得意気な顔つきだ。


「宮地さんに重要だからって重点的に教えてもらったところがそのまま出たんです。おかげで簡単に解けました。」

「すげえ……頑張ったな黒子」

「宮地さんが教えてくれたからです」


宮地が感心すると黒子は嬉しそうに微笑んだ。
宮地はあることを思いついて黒子にこいこいと手を降る。


「なんですか?」

「ん、ごほうび」


首を傾げる黒子の前髪をかきあげ、宮地は顕になった額に口付けた。
驚いて目を見開く黒子に笑ってみせる。


「な、え、え、」

「おでこにキスするのは祝福って意味があんだってさ」

「なん、ちょっと、」


真っ赤になった黒子は手で顔を覆ってしゃがみ込んだ。宮地は慌てたような様子で一緒にしゃがんで黒子の頭をわしわしと撫でる。


「そ、そんなショック受けなくてもいいだろ」

「いやこれは、ショックはショックですけど嫌なんじゃなくて逆ですよ逆ですからね嬉しいんですもうなんなんですかかっこいいじゃないですか宮地さんのばか……」

「おいこら、馬鹿じゃねえ」


さらっと混ぜられた一言に反応する宮地を置いて、黒子は顔を覆っていた手を退けて大きく息を吸った。
高ぶった気持ちが大分落ち着いたのか、黒子はそっと宮地を見上げる。


「……でも額へのキスって、友情って意味もありましたよね。僕たち友情じゃすまされない仲ですよね。」

「うっ、うるせえ!いいだろうが!あとその言い方なんかいやだ!」

「ですから、」


声をあげる宮地の頬を両手で包んで引き寄せる。反射的にぴたりと動きと口を止めて黒子の言葉の続きを待った。
黒子は僅かに口角を上げて宮地を真っ直ぐに射抜いた。


「次は口にしてほしいです。」


今度は宮地が真っ赤になる番だった。





-END-





***

キスの日で黒宮
黒子っちの敬語難しくてこれじゃない感があれですけど許してください

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