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□この思いの行方は…?
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嫌いから、好きになるのは簡単。
だけど、好きから嫌いになるのは簡単じゃない。
だったら、初めから嫌いでいれば簡単……。
大嫌いになれば、こんな思いをせずに済む。
綺麗に忘れよう。
そう、決意したのに……。
なんで、目の前に現れるかな…?
「いーざーやーくんよぉ」
「……なんで、こういうときばっか俺の前に現れるのか?何、ストーカーかなんかですか…?シズちゃんは」
シズちゃんは、片手に標識を持ったまま米噛みの血管を浮かせて、俺を睨む。
不機嫌なまま、俺は顰っ面(しかめっつら)でシズちゃんを見る。
手にはいつものナイフを持ち、戦闘体制に入ろうとする。
だが、いつものようにナイフを持つ手には力が入らない。
自分の気持ちに気づいた今、シズちゃんに刃物を向けるのは、何故か罪悪感がある。
あんなに、嫌いだったのに。
あんなに、殺したいと願ったのに。
なのに、何故好きになってしまった…?
嫌い嫌いも好きのうち
と、言う言葉があるが……正しくそれじゃないか……。
「………………本当…………どうしたものかな………?」
「あぁっ!?」
「いやぁ、シズちゃんからの攻撃をどう交わしたらいいかなぁ〜。と、考えてたんだよ。まぁ、馬鹿なシズちゃんと頭のいい俺じゃ、差は歴然なんだけどね」
「…………別に勝手に逃げればいいだろ…?ただ、俺は手前を殴りたいだけなんだからよぉ……」
「本当、毎回殴りたいだけなんて、本当にシズちゃんって生温いよね」
つい、俺の気持ちを露も知らないシズちゃんに八つ当たりしてしまう。
なんで、忘れたいと願えば願うほど逆に新しい思い出をつくるの?
綺麗に忘れさせてよ。
そして、今までの五分五分の戦争をしようよ。
今のは、戦争じゃないから。
圧倒的に、シズちゃんの有利じゃん。
そんなのズルイね。
ただでさえ、シズちゃんの方が肉体的に上なのに。
まぁ、頭は俺の方が上だけど。
でも、綺麗に忘れるなんて無理。
そんなのいくら完璧な俺でも出来ない。
だから、記憶の奥底に終うだけにしよう。
そうすれば、名だけ
『綺麗に忘れた』
ことになるから。
でも、最後の最後に我が儘言っていい…?
「シズちゃん……。逃げる前に……」
「…………あぁ゛?」
「………大好き………」
その後、自販機を投げられたのは言うまでもない……かな…?
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