▼シズイザ

□2
1ページ/2ページ



「・・・・・・・・・・・・」

「うーん・・・・・・」

「・・・どうだ、新羅?」

「駄目だ、全然分かんないね」


新羅は溜息混じりにそう吐き出しながら、
困ったような表情を貼り付けた顔を横に振った。

静雄は今現在、12歳臨也を連れて新羅の家に来ていた。
当然遊びに来た訳でもないし、殴り込みに来た訳でもない。
目が覚めるとこんな事になっていた恋人である臨也を、
診察してもらう為に此処、新羅の家へ来たのだ。
新羅は手に持っていた書物を机に放り、
少し申し訳なさそうな顔で静雄に謝る。


「悪いね静雄。僕でもこれは理解不能だよ」

「いや、いいんだ。
 結局お前がこの程度の闇医者という事は、元々知っていた事だしな」

「え?!それって何気に僕の事貶してるよね?そうだよね?」


因みに12歳臨也はと言うと、診察者が座る回転椅子に腰を下ろし、
楽しそうに両手を広げてぐるぐると回っている。


「ぐるんぐるーん、ぐるぐるーんっ」


静雄はそんな臨也を一瞥し、はぁ、と深い溜息をついた。
元々少し子供っぽく、無邪気な一面があった臨也は、
子供に戻った事でその無邪気さが一面からではなく、
全面から伝わって来るようになった。
新羅はそんな12歳臨也に目線を合わせるようにしゃがみ、
『町の優しいお医者さん』チックな笑顔で問いかける。


「えっと、臨也君は今何歳なのかな?」

「えー俺?俺は12歳だよ」

「そうか。じゃぁもう一つ質問。
 臨也君は今まで、どんな人生を送って来たのか、分かる?」


新羅の質問に12歳臨也は、唇を尖らせ目線を泳がす。
そしてその数秒後には首を傾げ腕を組んで考え始めた。


「うーん・・・・・・」


今までの記憶が全てぶっ飛んだかのように考え込む臨也。
数十秒の沈黙の後、臨也が最終的に
「普通の人生を送ってきたよ」
と、笑顔でそう告げた。
静雄はその笑顔がどことなく不安そうで、悲しそうな笑顔な気がした。
その事には気付かなかったようで、
「そっか」
と、新羅も笑顔で促した。


「とりあえず、この臨也には君の記憶も無ければ、
 12歳より上の記憶も全部無いみたいだ」


新羅立ち上がり、最終的に静雄にそう告げる。
そして12歳臨也の小さな背中を軽く押して、静雄の方に進ませた。
その新羅の行動に疑問符を浮かべる静雄に対し、
新羅は満面の笑みで静雄に言葉を投げ掛ける。


「と言う訳で、頑張ってね静雄お兄ちゃん」













次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ