短編小説
□君が可愛くて
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やっと退の歩いている後ろ姿が見えて声をかけた。
「はぁはぁ山崎っ」
声をかけられ退はビクッとし、頬をゴシゴシふいてから振り向いた。
「副長。遅かったですね。あ、もしかして俺が時間を間違えてたんですかね?あ、場所間違えてたのかな?遅れてすいませんでした!」
と苦笑いで謝った。
―泣いていた。いや泣かした…か。―
「馬鹿。お前…少しは怒れよ」
「え?なんでですか?」
首を傾げた。
「あーまぁいいや。なんか食いに行こーぜ」
退の手をつなぎ歩きだしファミレスに入った。
「なんかお前嬉しそうじゃねーか。」
タバコに火を点けフーっと吐いた。
「はい!だって副長がきてくれたから…嬉しくて」
退は頬をそめてニコニコしながら言った。
「もし俺がこなかったら?」
「…その時は、でも副長きてくれましたから」
困った顔をして笑った。
二度も同じこと言うなよと思ったが
「二人でいる時くらい名前で呼べ」
「はい!土方さん」
「…まぁいいか」
二人は昼食をとり店を出た。
「土方さん。あの、どこ行きます?」
「どっか行きてぇ所とかあるのか?」
そう聞くと首を横に振った。
「そうか」
手を繋ぎ、ブラブラと二人は街中を歩いた。
「副ちょじゃなかった。土方さん。なんか飲み物買って来てもいいですか?」
「あぁ。じゃあ俺はここにいるから」
そう言われ、退は飲み物を買いに行った。
缶コーヒーとお茶を持ち
「土方さ…」
と、声をかけようとしたが土方は女の人達に囲まれていた。
「お一人なんですか?」
「いや、連れを待ってる」
「もしかして彼女とかですか?」
「あ、いや…」
「これから暇ですか?その人も連れて私達と遊びませんか?」
それを見た退は声をかけずその場を去った。
それから数分して土方の携帯がブルった。
携帯を見るとメールだった。
開くと退からだった。
『先に帰ります』
それを見た土方はその場を走り去った。
女性達は「えー」とか「待って」とか言っていたようだったが土方の耳には一切入ってこなかった。
―はあ?なんでだ!どーゆー事だよ!―