短編小説

□それぞれのバレンタイン
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二月に入ってすぐ僕は姉上と神楽ちゃんに捕まった。



「新ちゃん。今日から万事屋に行っちゃ駄目よ」

朝食をとっている時に姉上がこう切り出した。

「なんでですか?」
味噌汁をすすり机に置いた。

「今日から神楽ちゃんが家に通いだすわ。だから新ちゃんは、これ買ってきなさい。」
一枚のメモ用紙を渡された。

僕の質問は無視ですか?と思いながら受け取り、それを見たら納得した。

「あぁ、じゃあ今日から練習ですね?」

「そうよ」
と笑顔で言った。

************


「銀ちゃん今日から新八こないから」
こちらも朝食をとっている時に神楽が話した。

「…は?なんで?」
銀時は寝起きでぼーっとしながら答えた。

「私も姉御に用があるから当分通うヨ。だから14日まで定春の散歩、するよろし!」

「話がみえねぇぞこら。」

「まぁそういうことだから行ってくるネ」
朝食をペロリとたいらげ玄関に向かおうとして何かを思い出し、くるりと銀時の方をむいた。
「絶対に着いてきたり、姉御の家に来ちゃ駄目ネ。来たら一生…フフフ」
そう言って神楽は万事屋を走って出ていった。

「どういう事?新手のいじめですかい?」
残された銀時はポカンとしていた。

************


神楽が志村家に着き、新八は一人、大江戸マートに出掛けた。

―銀さんに会えないのは寂しいけど、僕も作って渡したら喜んでくれるかな?―

新八はそう思ったら微笑んでしまい、ウキウキして歩いていた。

前方から退が歩いてきた。

「あ、こんにちは新八君。なんだか嬉しそうだね」

「こんにちは。ハハ、ちょっと考え事してて。今日は仕事じゃないんですか?」
退の服装がいつもと違い、私服だったので聞いてみた。

「あ、えぇ。今日は誕生日なんで休みを貰いました。」

「え!おめでとうございます。あの、プレゼントはすぐに用意できないんですけど、あとで何か贈りますね」

「プレゼントというか…教わりたいことがあるんですけど、それじゃ駄目ですか?」
退はそわそわしながら聞いた。

「教わりたいこと?僕にですか?」
新八は首をかしげた。


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