長編小説
□もう離さない
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―新八どこ行くんだ?
まさか多串君とデート!?―
銀時は考えながらまだ尾行していた。
新八の行く方向は飲み屋とは違い、遊廓方面に向かっていた。
―な、何!16歳で女遊びですかい!―
銀時がそう思っていたら、新八は一つの店に近づいて裏口から入って行った。
―あれ?遊びじゃなくて、店員の方?呼び込みとか?って俺に隠れて仕事かよ!―
そう思いながら店の前に立って看板を見た銀時は固まった。
「君、いくつ?」
店の店長が聞いてきた。
「18です。」
新八は年を誤魔化した。
店長の男はジロジロ見ながら
「ふーん。まぁ顔はいいけど、君、恋人とかいるんじゃない?」
と聞いてきた。
新八は、は?と思いながら
「そんな人いません」
と首を振りながら答えた。
「じゃあ、その首…まぁいいか。採用するよ。はい、志村君これに着替えて、そしたらそこの椅子でも座って待ってて。指名入ったら呼ぶからさ。」
そう言い、店長は部屋を出ていった。
渡された服を見て
「…女物の着物…」
―なんだかすごく高そうだなぁ。姉上がお客さんに貰うくらいの物かな?―
そんな事を思いつつ、着物に袖を通していく。
姉の着付を何度か手伝った事があり、なんなく着こなした。
―そういえば首がなんとか言ってたけど―
と思い出し鏡の前に行き、首を見たら一ヶ所赤くなっていた。
「なんだ虫刺されか。」
気にせず椅子にストンと座った。
することがなく部屋をキョロキョロと眺めていたらコンコンとドアが叩かれ
「志村君着替えられた?指名入ったから二階の部屋に行ってほしいんだけど」
ドアの前で店長がそう言った。
えっ!もう?と思ったが
「はい。今行きます…」
と言いドアを開け階段を登り始めた。
―どうしよう…やっぱり恐い…でもお金の為に決めた事だから…―
考えながら部屋の前に着いてしまった。