長編小説

□desire
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何度か土方と体を重ね、初めての夜、土方に嫌いと言われ、その事にショックを受け、自分は土方を好きなんだと気付いた。

いつもの様に昼間、土方に声をかけられ、仕事をし、夜その報告をしに部屋の前まで行った。

―今日も俺は抱かれるのかな…―

好きな人に抱かれるのは嬉しい。でも本人には嫌われている…だから、この想いは伝えられない

そんな複雑な気持ちでいつもいた。

―たとえ、ただの欲の吐け口でも俺を求めてくれるならそれでいい―

そう自分に言い聞かせ、障子に手をかけた時
「土方さん。山崎が好きって風の噂で聞きやしたぜ」

中から聞こえてきたのは沖田の声だった。

その言葉を聞いて障子をそーっと開けて中を覗いた。
土方は机に向かって本を読みながら
「は?なんだその噂。俺はあいつが大っ嫌ぇーなんだよ」

ズキッ
―…そんなの。わかってますよ―

沖田と目があった。

―やばっ。ばれた!―

沖田はニヤリと笑い、
「土方さん」
土方の背中に抱きついた。

「あ?なんだよ」
今いいところなんだから邪魔すんなよと言い、かなり機嫌が悪かった。

「だって最近構ってくれなくて俺、寂しいんでさぁ」

―何?―

土方が沖田の方をむいたら沖田が
「だから山崎なんかとしてるんじゃねぇかなって、かまかけてみたんでさぁ」
そう言い、土方を引っ張ってキスをした。

―……あぁ、そうなんだ…―

退はそーっと障子を閉めて、自室のある方へとぼとぼ歩いて行った。


「総悟!てめー何気持ち悪いことしてんだよ!」
頭に拳骨を食らわせた。

「おえぇー。本当でさぁ」
沖田も口を抑えて吐く真似をした。

「ったく。テメーは何しにきたんだよ!早く部屋に帰れ!」

蹴を入れて部屋から追い出した。

―ったく山崎が来んだから邪魔なんだよ―

そう思いながら睨みつけてピシャっと障子を閉めた。

退は廊下をボーっとしながら
―副長は俺が嫌いで、ただの欲の吐け口で…沖田さんは、副長の…恋人―

「なんだ。…そっか。…あ、報告…」
するの忘れたなぁ。と思いながら涙が溢れ、頬に流れた。

「俺の馬鹿…聞くんじゃ…見るんじゃなかったヒック」

―今頃あの二人は…―

廊下で立ち止まり、蹲ってしまった。

「副長ぅ…グスッ」
 
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