長編小説

□決意
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―俺だけがこんなに心が痛い―


なんで俺が退に
『嫌い』
なんて嘘ついてるかって?
そう言っとけば屯所で俺たちの事がバレないからだ。

それと同時に、好きという気持ちも本人にはバレない。

―たとえそれが卑怯な手で、本人を傷つけて嫌われたとしても―

「それでも俺はよかったんだ…」
ボソッっと街を見回り中に言った。

土方の風邪はあれから2、3日続いた。

寝込んでから今まで一度も退に会っていなかった。
会っていないというか顔を会わせるが話をしていないといったほうが正しい。

「あれから一週間か…」

「何が一週間なんですかぃ?土方さん」
後ろから沖田が声をかけた。

「あ?なんでもねぇよ。」

「そうですかぃ。あ、そういえば今日、山崎のやつが探してましたぜ」

「は?おい、なんで今頃言うんだよ」
屯所を出てからもう3時間以上経つ。

「今思い出したんでさぁ。すいやせーん」
あまり気持ちのこもってない言い方で言った。

「しゃーねーな。帰るぞ」
これで久しぶりに話せると思い、歩きだしたら沖田が
「土方さん。山崎から言伝を預かってきましたから帰らなくて平気ですよー」
それを聞いて足を止め、振り向いた。

不機嫌な声で
「あ゙ぁ゙?」

「一ヵ月くらい局長に頼まれた偵察で屯所に帰れないんで隠密が必要な場合は違う人に頼んでください。だそうですぜ」

「…近藤さんか…」
頭を抱えた。

―近藤さんのことだから、とっつあんに頼まれたか、くだらない事だろうな―
と思い、近くにある壁を蹴った。

「…土方さん。」

「んだよ」

「(足ものっそい痛いんだろうけど)本当は山崎の事どー思ってるんですか?」
沖田に振り向きもせず
「…どーも思ってねぇよ」

「また姉と同じ繰り返しですかぃ?まぁ俺はそれのほうがいいですけどねぇ」
そう言って歩いて行ってしまった。

「…くそっ。痛ぇ」

―心も足も…―
 
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