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□職員室
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職員室
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涙が止まらない。
早く止まれと思うほど溢れ出す。
外では新たな門出を祝っているというのに。
送る側が泣いてどうする、と叱咤してみても止まる気配はない。
「先生、大丈夫?」
扉が開くのと同時に声がした。
咄嗟に扉に背を向け、大丈夫と答えた。
「嘘ばっかり」
大きな手が頭に乗る。
その手はせっかく整えた髪をぐしゃぐしゃと乱した。
「ちょっ、やめなさい」
「そう言って生徒扱い出来るのも今日までだな」
振り向いて見上げた顔は清々しく笑っていた。
頭に乗っていた手が肩に落ち、力のままに引き寄せられる。
「黒羽くん…?」
「俺はこの日をずっと待っていた。だから泣くなよ」
「仕方ないじゃない、悲しいんだから」
困ったように笑った。
見えないけど、多分そう。
「好きな女の気持ちもわからない俺はまだまだ大人じゃないな」
「そりゃ成人まであと二年もありますから」
きっと二十歳になってもわからない。
私の不条理な気持ちは。
「旅立つ世界が大人にしてくれるのよ」
「さすが先生」
抱きしめていた腕が緩み、体を離した。
流れる涙はまだ止まらない。
「卒業、おめでとう」
世界は広い。
そこでは学校なんてとても小さい。
卒業して行くのが悲しいのではない。
不安で悲しいのだ。
「行くぞ」
そう言って握られた手。
その温もりで不安を打ち消せるほど子供でも、信じれるほど大人でもない。
精一杯、大人のフリをしている恋に夢中な女でしかないのだ。
20070817
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