他CP
□みかんゼリー
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買い物から帰って来たら、悟空がベッドでゴロゴロしていた。
「ただいま」
「お帰り、八戒」
ニコッと笑う金の瞳。
「いい子にしてました?」
悪いことは出来ないし、もし何かしていても、すぐ顔に出る性質。
いつもと何ら変わらないから、ちゃんと大人しく待っていただろうことは判ってる。
「ぉうっ♪」
細まる金色。
「じゃあ、ご褒美ですね」
袋から取り出したのは、みかんゼリー。
透明なゼリーの中に、たくさんの橙色。
「食べます?」
「食べる〜♪」
嬉しそうに身体を起こした悟空に、プラスチックのスプーンと一緒に渡す。
ペリペリと蓋を開けた時、透明カップから零れた液体。
手首の内側を伝い落ちて、慌てて受け止めた紅い口唇が笑った。
「甘」
ほんわか笑顔で、ゼリーを纏ったみかんを掬う。
口に運び、幼い顔が溶けた。
「美味しいですか?」
「ん。ウマウマvV」
何かを食べている時程、癒される笑顔はなくて。
それが……少し不満で。
「……どーしたんだ?」
大粒のみかんを口に入れ、不思議そうに悟空が言った。
「いえ……美味しそうに食べるなーと思って」
「だってウマいんだもん」
みかんをモグモグ。
「八戒も食う?」
「甘いですか?」
「すっげー甘い♪」
ベッドに座る彼の前まで行って、少し身体を折り曲げる。
金色と同じ目線。
「はい」
スプーンと一緒にカップを差し出す手。
その手ごと左手で掴んで、悟空の左側に右手を突いて。
濡れた口唇をぺろっと舐めた。
「ホント、甘」
頬が真っ赤に染まって、驚いたように金色が揺れた。
「はっ、八戒……///」
「あれ?どうしました?」
知ってるけど、判らない顔で聞いてみた。
「その……不意打ちは、卑怯……///」
「そろそろ慣れて下さいよ」
俯いた頭に、困った風に笑ってみたけれど。
そんな恥じらう悟空も好きな訳で。
彼の手からカップを拾い、スプーンでみかんを掬う。
「みかんがどうして甘くなるか、判ります?」
紅い顔が、そのままの色で見上げてきた。
惚けた表情に、笑顔を向けて。
「太陽の光りを、いっぱい浴びるからですよ」
橙色のみかんを口に入れて。
そのまま彼にキスをした。
甘い、甘い、みかんを送る。
「まるで、貴方みたいですね」
彼の言う〈太陽〉に、照らされて、導かれて育った。
負けん気知らずな普段の皮を剥がせば、甘く甘く……揺れて。
「//八戒……///」
「はい?」
「オレ……みかんじゃないんだけど//ι」
「知ってますよ」
カップをサイドテーブルに置いて、トン、と小さな身体を押す。
トサッとベッドに倒れて、まぁるくなった瞳。
「僕が頂くのは、貴方ですから」
みかんよりも甘い、キミの全てを。
END