53−1

□kiss mark
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「ん……ふぅっ」


青く深い闇の中、真っ白なシーツに埋もれて揺れている金色。
普段は酷く傲慢なこの神々しい光りが、今自分の手の内で乱れていると実感すれば……穿つ力を抑えられるはずもなく。
いつもは銃を握っている右手は、シーツを力一杯握り締めている。
左手は口許を押さえ、女のように喘ぐ声を殺そうとしていた。
それを無理矢理引き剥がす。


「ちゃんと、声出せよ」
「バカ……言ってんじゃ、ねぇっ――ンぁッ」


快楽に身を委ねている時でさえ、よく回る頭が気にしているのは……隣りの部屋。
既にあの2人は寝静まっているはずだが、このうるさいくらいの静寂だ。
微かな物音でさえすぐに届いてしまう――と、思っているのだろう。


「大丈夫だって。部屋の壁が厚いのは、予め確認済みデスvV」
「そ、ゆ……問題、じゃ……っ、ハッ、ぁ、あっ」


反抗的な言葉を放つが、もうあまり気にはしていないようで……というか、気が回らなくなったようで。
揺さぶる度に漏れる声を聴いて、紅い瞳がさも楽しそうに笑った。


「イイ声vV」


普段から、怒ったりする時もこの声だったらいいのに……。
そう思って、悟浄は苦笑を滲ませた。


(我慢出来る自信ねぇな)


白い胸に吸い付いた。
今日つけた徴。
昨日作った徴。
それより以前に出来た、消えかけの徴――
だが、のけ反る首筋には何も刻めていない。
嫌がるのだ、コイツは。
幾らハイネックのアンダーで隠れるとはいえ、他人の目に触れる<もしも>の事態があるかも知れない、と。


「なぁ。……キスマーク付けさせてよ」


白い首筋を指先で撫でると、ビクンッと身体が跳ねた。


「んっ、ふ……ざけ、な……っ」


潤んだ紫暗が、威嚇の色を灯す。
やはりダメらしい。
無理にすると、今後襲わせてもらえなさそうだし。


「……じゃ、さ……ココは?」


身体は深く繋がったまま。
大の大人の割りには華奢な躰をひっくり返して、俯せにさせる。


「な、にぉ――」


肩越しに振り返ろうとする顔を抑え、首の後ろにかかる金糸を掻き分けて軽くキスをする。


「ココだったら、髪に隠れるからいーだろ?」
「ゃっ、だ、め……ごじょ――っ」


首をぶんぶん左右に振り、抵抗してくる。


「何でー?」
「他のトコ、に、腐る程……っ、付けてンだ、ろが……ハァっ」
「付けたいんだよ。いつでも見られる場所に。……それとも、あいつらの前で服ひっぺがして欲しい?」
「一々、見なくても、イイだろォ、が……」
「やっぱ……確認したいじゃん。お前が、俺のモンだって」
「イミ、わかんね……っふ」
「そーゆーワケだから、ご理解宜しく♪」
「まっ、待て――」


文句をたれる口に指を突っ込んで黙らせ、石鹸の甘い香りがするうなじに唇を触れる。
ビクッと反応して、動きが停まる金糸。
肌をきつく吸い上げる感覚があり……ややあって、肩口から紅い髪が離れていった。


「ん〜、くっきりvV」


嬉しそうに笑った声に、艶めいた光りは、真っ赤になってシーツに顔を埋めた。


「ったく……ば、か……ぁあっ」





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