素敵頂き物(小説)

□銀色砂糖。様・キリリク
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12月24日。
屯所では、特別、クリスマスだんて騒ぐ奴はいなくて、皆いつも通りの夜を迎えていた。


しかし、どこからともなく、一人、二人と暇を持て余した隊士が、集まりだす。
気が付くとよく見かける晩酌の風景から、大人数の宴会に成り代わっていた。

クリスマスに便乗し、つかの間の休息。


山崎退は大部屋の前を通りかかると、部屋の中をちらりと見た。
(やれやれ…すごいことになってらぁ…)
羽目を外した隊士達が酒に溺れ、むさ苦しいことになっている。


山崎は、苦笑いを浮かべ、部屋の中にある人物を探した。

居ない。

いや。
居るはずがない。こういった宴会的なものには絶対に顔を出さない。
(やっぱりな…居るわけないか。部屋で仕事でもしてるのかなぁ。いやでもこんな時間だしもう寝たか。)

山崎は溜め息を漏らし、大部屋の戸を閉めた。
気が付くと無意識に足を運んでいた、
副長室。

部屋に行く途中で、まだ明かりがともっているのが分かった。
(まだ寝てないのか!?まさかまだ仕事して…ったく、あの人寝ないで仕事片づけるつもりだ…)

いつもそうだ。
何も知らない顔して、実はいつも、仕事背負い込んで。
今日だってたまには皆と羽目外せばいいものを、いつ何が起こっても出ていけるように、こうして起きている。


俺は知っている。


この戸を開けたらきっと、頭抱えながら煙草をふかす背中が目の前にあることを。


俺は知っている。




「副長。入りますよ。」

余計な音をたてないよう、丁寧に開けた戸の向こうには、予想した通りの背中と、予想以上の煙草の煙が待っていた。
「…」
返事はない。
(あーあ、機嫌悪そう…。)
山崎は、部屋の主、土方十四郎の横に静かに屈んだ。
「副長…お茶、持ってきましょうか??」
のぞき込んだ顔は、ここ何日か満足に寝ていない風で疲れていた。
顔色もあまり良くない。

(いつもこうやって…この人はいつだって皆に頼られるばかりで、自分は頼ろうとしない。)

もちろん、自分なんかが手伝える内容の仕事じゃない。

そんなのは分かってる。


でも、そんな俺でもできることは…。
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