お題

□小さな手を包む臆病な手
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(静雄×吉宗)


「昨日俺が気づいてればよかったんだよなあ、ほんと、わるい」

がっくりと肩を落として、背中には暗雲を渦巻かせて。普段自販機やガードレール、標識そのたもろもろを振り回したり 投げ飛ばしたりしている人間と同一人物とは思えないほどの落ち込みようをする 平和島静雄の姿が吉宗の目の前にあった。
昨日のことである。いつものように学校帰り、ふらりと60階通りに立ち寄っては、静雄の姿を探した吉宗は、他の人たちとは頭ひとつ分くらい飛び出した金髪の頭を発見するとパタパタと歩み寄っていった。近づいてくる吉宗に気付いた静雄は、煙草を加えた口元をゆるりと綻ばせて、すぐ傍にまできた吉宗の頭をがしがしと撫でる。そのときに、触れた頭がいつもよりも少しばかり暖かいような、と思った静雄ではあったが、撫でられたことで にへら と笑みを溢す吉宗を見て その ポッ と浮かんだ疑問もうやむやになってしまった。
後日、静雄に届けられた吉宗の風邪をひきましたとのメールで。昨日の 吉宗に触れたときの手のひらの暖かさを思い出し、盛大に落ち込むことになった静雄の姿が いまここにある。


「本当にぜんぜん平気ですから、そんなに落ち込まないでください」


吉宗としては静雄に全くの非はないので気にやむようなことはしないでほしいのだが、なおも落ち込み続ける静雄に苦笑する。状態報告までに風邪であるとメールをしただけのものに、これでもかというほどに心配をしてくれた上 見舞いにまで来てくれて、こちらが感謝したいくらいだ。
ふう、と小さな吐息を吐いて、吉宗は床にばかり視線を向けている 静雄の視界に入るように自分の手のひらをひらひらと動かした。


「じゃあ、僕の手握っててください。眠るまで」


ここまでくればなにかお願いでもしなければ、静雄は引き下がらないのだろうと思った吉宗はひとつお願いを申し出る。
ひらひらと踊らせていた手を、そ と静雄に近づければ 静雄は困ったような 難しい表情をして吉宗の手に自分の手を重ねた。慎重に、慎重に。硝子に触るくらいに慎重に触れた手に、ゆっくりと力を込める。


「こ、これくらいか?」
「はい、大丈夫です。ありがとうございます、静雄さん」


本当は少しだけ、痛かったけれど。
おどおどとした様子の静雄に 吉宗はにこりと微笑んだ。


.....
企画提出用でございます。
静雄さんはヨシヨシに触れるときに尋常じゃないくらい慎重に慎重に扱っていたら燃えます。違った萌えます。

作成日:20101215.
 

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