お題

□テスト勉強、触れ合う掌
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(正臣×吉宗 企画提出作品)


今日の昼のことである。
放課後、一緒に帰るがてら池袋をぶらぶらしようと約束をした帝人と杏里と正臣、そして吉宗だったのだが。いざ放課後になると帝人と杏里は先生に用事を任されてしまった。一時間程度で終わるから、ということだったので 期末テストも近いこともあり、一時間程度ならばテスト勉強でもして待っておくよと吉宗は用事を任された二人に言った。正臣は、吉宗を見て「え?なにテスト勉強って。俺も入ってんの?」と言っていたがスルーを決め込んだ吉宗である。

夕暮れの光が窓からこぼれてくる。オレンジに染まった教室内にいるのは、吉宗と正臣だけだった。つい先ほどまではまばらに人がいたのだが、みな帰ってしまったらしい。二人は会話らしい会話もせずに机、正確には机の上に置いてある問題集とにらめっこをしている。しかし、問題集にペンをはしらせているのは吉宗だけで、正臣はといえばつまらなさそうにペンをぱたぱたと動かしているだけだった。


「紀田くん…」
「ヨシヨシってさあ、」


吉宗は、勉強をする様子のない正臣に勉強しろよとでも言ってやるつもりだったのだが。吉宗の声に被せるように、正臣の声が降ってくる。
問題集へむけていた視線を、す と正臣へと移した吉宗の目に入ったのは 夕焼けの光を浴びてきらきらと光る正臣の髪の毛だった。脱色をしたのか、染めたのか。黄色いそれはオレンジの光をよく含む。綺麗だなあ、だなんて思いながら、吉宗はキラキラ光るそれを眩しそうに見つめる。


「綺麗だよなあ」


いままさに、自分の考えていたことが正臣の口からすらりとこぼれたものだから吉宗は驚いて 僅かに目を見開いた。しかし、正臣の発言の前後をくっつければ「ヨシヨシってさあ、綺麗だよなあ」になるわけで。その言葉に些かピンとこない吉宗の顔が不思議そうなものに変わっていく。


「紀田くん、寝ぼけてる?」
「いやいやいや、なんでだよ!」
「自分の発言をかえりみてくれれば、わかることじゃない?」
「…いや、あのさあ、ヨシヨシって動作っていうの?所作っていうの?綺麗だよなあって思ってさ」


手は、俺とおんなじ男のもんで。ましてや、女の子みたいにツルツル〜スベスベ〜じゃないのにすげえね。なんて言いながら、正臣は吉宗の手をとった。
正臣の大きな瞳が吉宗の聞き手を、観察するように見ている。彼の興味はもはやテスト勉強でもなく、問題集でもなく、自分の手なんだろう。シャーペンを握ることの出来なくなった吉宗は仕方なく、テスト勉強を中断することにしたのであった。


.....
企画提出用です。
ヨシヨシは動作が美しいと信じて疑わない。普段は庶民派なんだろうけど、ふとしたことで育ちの良さが出てくれると私が美味しいです。

作成日:20101215.
 

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