反対な彼女

□反対な彼女‐和‐
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「お、重い」

歩くたびに片手に持った袋からカシャン、カシャンとビンとかカンが当たる音がする
もう片方からはガサガサと物が擦れる音がする

つまりは両手に荷物がいっぱい

痛くても持ち替えることができないから必然的に手が痛い

「買いすぎたかなぁ」

未来さんがどれだけお酒を飲むとか分からないから適当に買ってしまった
足りないよりかは多めにあったほうが困らないだろうっていう短略的な考え

「重そうですね」

後ろから声が聞こえてきたと思ったらお酒が入っている方の袋をすっと持ち上げられていた

「え?」

誰って思って少し後ろを見たらそこには

優ちゃんが立っていた

「こんばんは先輩」

「どう…して」

私はその場に立ち尽くす
どうして優ちゃんがいて、私の荷物を持っていて、私に話しかけてきたの?

だって昨日の今日だよ

仕事は仕方ないとしても、優ちゃんはここに住んでないから今ここに居るのはおかしい

「会社では先輩の私物をお返しできなかったので」

優ちゃんの表情は変わらない
まるで事務的なことを伝えているような感じ

駄目やっぱり苦しいよ…

優ちゃんが居ない場所でなら平常でいられる
会社でなら割り切れる

でも心構えも何もしてない今、本人を目の前にしたらやっぱり駄目

「とりあえず先輩の家まで送りします」

「……どうして?」

まるで声が出ない
声が震えてしまう

「荷物重そうですし、ここで更に荷物を増やすのはどうかと思いました」

「いい」

放っておいて
今更…そんな気遣い要らないから、優しくなんてしないでいいから

「…そうですか」

でも優ちゃんは勝手に足を進めていた

「優ちゃん…止って」

優ちゃんは反応を返してくれない

「お願い。止って」

私はその場で足を止める
私が持っている袋の紐の部分と優ちゃんが持っている部分が伸びて引っ張られている

きっとこれ以上距離があけば切れてしまうだろう

「止ってどうしますか?今帰ろうが送って帰ろうが私にとっては変わらないんです」

「優ちゃんにとってはそうかもしれないけど私にとっては違うの!!」

「同じですよ先輩、もう昨日」

静かな住宅街にコツコツと足音が聞こえてきた
だんだんと近づいてきている

でも今は回りに気を配ってなんていられない

どうしたらいいの

ガサ
二つの袋がいっぺんに取られていた

今度は誰?

視線を下から前に変えた

「荷物は私が持っていくから、あなたは帰っていいよ」

「未来…さん?」

目の前には後姿の未来さんが居た
ちょうど私と優ちゃんの間に立っていて、まるで私を守っていてくれているような気がした

「あなたは誰ですか?」

いぶかしげな優ちゃんの声

「友達かな」

冷静な未来さんの声

「そうですか。ではこれを先輩に渡しておいてください」

そういって優ちゃんは手に持っていた荷物を未来さんに渡していた

「分かった。じゃあ私達はもう行くから」

未来さんは片手に全部の荷物を持ってあいている手で私の手を握ってくれた
優しく握ってくれる

「帰ろっか」

未来さんは私の顔を見ると柔らかく微笑んでから私の手を引いて歩き始めていた

すれ違いざま優ちゃんは一瞬私を見てから直ぐに駅の方に向かって歩いていった

私はもう何も考えられず、引かれるままに未来さんに付いて行くことしか出来なかった
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