飲ませないで!!

□飲ませないで!!‐理沙‐
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「しゅ、主任。お、お先に」

「私が帰れないのにどうして坂下が私より早く帰るのかしら」

私の目の前には今非常におどおどしながら立っている部下、坂下遥が居た
私に話しかけるとき、私が話しかけるときいつも坂下はびくびくしている
そしていつもそんな坂下を見て思うことがある

こいつは何てもったいない生き物なんだろうって

黙って、すまして立っていたら坂下は美形だ
女と男の中間みたいな感じの曖昧な容姿。簡単に言えば中性的
身長も高くて、手足がスラリと伸びている
少し切れ長の目はおどおどしてなければいい感じ
見つめられたら少しやばいかも

でもいかんせん奴は気弱で小心者。最大限に自分の魅力を殺していた

「え、と、もう、仕事終わった、ので」

でも気弱なくせに仕事は速い。きっと部下の中で一番使える
しかし坂下はどうしようもなく気弱で小心者であんまり職場では話さないから影が薄かった
宝の持ち腐れ、この言葉が坂下にはぴったりだろう

「じゃあ私を手伝いなさいよ」

「そ、そんなぁ……今日はと、友達、みたいな人に飲みに誘われて」

友達みたいって何よそれ?それすら外見と一緒で曖昧なの?どんだけよ

「友達みたいって、何よ」

「えと。その、たまたま知り合った子で、何か仲良くなって」

今日は強引に誘われて断れなくて坂下はそうおどおどしながら言った
小心者らしく無理な誘いを断れなかったみたい
私は全くこいつは……と呆れる。嫌なら断ればいいじゃないのって思うけどしょせん坂下
そんなことが初めから出来ていたら坂下は今もう少し気が強い人間に成長できていたことだろう

「や、約束の時間になってしまうので、できたら今日は、お、お先に」

おどおどおどと坂下
いらいらいらと私

もっとしゃきっとしろといつも叩きたくなる
もう、イライラするのよね……こうタイプの顔がイジイジしていると
外見だけで言えば坂下はもろにタイプだった。でも初めて坂下を見たときの私のときめきを返して欲しい
不覚にもこんな坂下にときめいてしまったのを、坂下がこの部署に配属されてから2.3日で後悔したもの

私が側に行けばビクついて、話しかけると目を逸らす
そんなに、私が怖いかああ!?と思った

だけどもういい。坂下はしょせん坂下
小心者で気が弱くてはっきり自分の気持ちも言えないってわかってるし

「はいはい。わかったわよ、もういいから。お疲れ」

私はしっしと手を振ってからPCに向かいなおす
すると坂下から小さく、ありがとうございますお疲れ様でしたと声が聞こえ坂下の気配が消えていたのだった
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