近距離恋愛

□近距離恋愛
1ページ/3ページ

梓が私と縁の前からいなくなって、私と縁は私の部屋に移動した
部屋に入って上着を脱いで荷物を置く
縁もそうしていた。でも私と縁の間には会話がなくて部屋はしんと静まり返っていた

きっと縁、私と梓のこと気になってるのかなって漠然とそう思う
だって梓が私のこと自分の恋人だって縁に言ったから、だから縁はそのこと気になってるのかなって

私と梓は女同士、私にとってそれはもう気にすることではないからいいんだけど全ての人がそうだとうは限らない
それに今まで縁には言っていなかったことだから

驚かせちゃったかな……

「あのね、縁」

少しいつもの元気がない縁の前に立って正面から向き合った
私が縁の名前を呼ぶと縁はじっと私のことを見つめていた

「梓のこと話すね。気になる、よね?」

私は自分の胸を押さえていた
梓のことを思い出すと苦しくなる

それが恋心なのか、ただの辛い思い出からなのか私にはわからない
だけど梓を思えば普通じゃいられない自分が居た

「ねえ美咲」

呼ばれた瞬間私の体が優しく抱き寄せられていた
包まれている香りが少し甘くて落ち着く香りだった

「別にいいよ話さなくて。美咲が辛いならいい」

頭を撫でられると、それが心地よくて私は目をつぶっていた

縁といると凄く落ち着ける
さっきもそう、梓がいきなり私の前に現れて落ち着かなかった心が
縁に抱きしめられているだけで私は落ち着けていた

やっぱり付き合いが長いからかな
縁とは入社してからずっとの付き合いだから

「でも縁気になってるでしょ?」

私は大丈夫だよって言うと縁は少し腕の力を強めて私を抱きしめていた
きっと私のためにそうしてくれているんだろうけど、どうしてだろう
縁の方が私よりも何だか辛そうな気がした
だって声が少しいつもよりおとなしい気がするから

「それは、そうだけど。でも美咲辛そうだから」

「私は大丈夫だよ。だって縁が側にいてくれるから」

「そんなこと……」

耳元で小さい声が聞こえた
でも小さすぎてよく聞き取れなかった

「縁なにか言った?」

「……言ってないよ。何も」

縁は体を離した。だから私と縁はまた向かい合うと真剣な顔の縁と目が合った

「ねえ本当に私が聞いてもいいの?」

「縁に聞いて欲しいかな」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ