反対な彼女

□反対な彼女−未来−
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彼女は泣き崩れてから20分ほどそのままだった

私は腕時計を確認する
もう夜中の11時44分

彼女はきっとまだまだそこから動くことはしないだろう

さすがにこんなところで泣いている女性を一人にはできないしなーと思った
今は時間的に言えば深夜枠に近い
自分だってもう帰らないと危ないと感じる時間だった

お節介かなとも思ったけど、放ってもおけない
だから私は隠れていたもの陰から出て行った

一歩二歩と彼女に近づいていく

静かな公園に彼女の鳴き声以外が響いた

でも彼女は私の存在に気づかない
コツコツと足を運び彼女の目の前に立った。そしてしゃがみ込む

「ねえ。もう危ないから帰ったほうが良いよ」

少し覗き込むように彼女を確認した

「……」

彼女は涙を流しながら無言で顔を上げた

その瞬間私はハッと息を呑んだ

赤くなった目は酷くてメイクも崩れている
髪も乱れていて顔にかかっている

でも不謹慎ながらその泣き顔を綺麗だと思った

大きくて色素が薄い茶色の目
今は赤いが涙のせいでキラキラしていて眼が離せない

そして流れる涙が頬を伝っているさまは、何と言うか美しいと思ってしまった

「…放っておいて」

彼女は搾り出すように声を出した
その声は少しかすれていたが少し高くて私の耳に気持ちよく届いた
顔もさることながら声も綺麗

「そういう訳にもいかないよ。もう12時ちかくだし危ない」

「あなたには関係ないでしょ」

彼女は顔を俯かせた
私に泣き顔を見せたくないのかもしれない、まあ確かに初対面でしかも知らない奴に泣き顔なんて普通見せたくないよな

「まあね。関係はないかも…でもこんな時間に人気の無い所で泣いているなんて危ないし、それに私が帰った後でもし誰かに襲われてニュースにでもなったら私夢見悪くなっちゃうからさ」

本当は隠れて事の一部始終を見ていて心配だから、なんて言えないし、しょうがないが適当な理由を言った

彼女はしばらく黙っていたが、何か考えがまとまったのか顔を少し上げ私を見てきた

「解りました。帰ります…ご迷惑おかけしました」

そう言って彼女は立ち上がろうと足を地面についた

「っ痛」

彼女は痛そうに足の裏を押さえた
ああ。そういえば靴はいていなかったみたいだし怪我しっちゃったのかもなと思った
だから私は屈んだまま彼女に背を向けた

「痛いみたいだね。家まで送るから背中乗って」

「え?でも」

彼女は驚いたような声を出した
まあそりゃ驚くわ。しらないジャージ姿の女に背中に乗れと言われたら

「いいから。乗りなよ、そのまま歩いたんじゃ怪我悪化しちゃうし傷口に何かはいったら大変だよ」

「でも、見ず知らずの方にそこまでは」

彼女は戸惑っているようで困った声をしている

「あーまあそうだよね。でも気にしないで」

「そういうわけには」

「じゃあ運賃ってことで途中でスポーツドリンク買ってよ。それで貸し借りもないし、労働の報酬も貰えるんだから気兼ねする必要ないよ」

また彼女はしばらく黙った
でも少ししたら、お願いしますと声が聞こえてきた

「ん。じゃ乗りなよ」

失礼しますと言ってから彼女は背中に乗ってきた
そして私は力を入れて立ち上がる
彼女は軽かった。これなら苦もなく帰れそう、普段トレーニングしといて良かった
自分で乗れと言って運べなかったらダサすぎて泣いちゃうところだったしね

とりあえず私は公園の出口に向かって歩き始めた
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