反対な彼女

□反対な彼女-沙織-
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彼女を推薦したのは私情5割仕事上5割
私は彼女の仕事能力を凄く買っていたから、例え私情5割だったとしても関係ない

だって彼女にはそれだけの実力があるから

だから私が部長に彼女、未来ちゃんを推薦したって誰からもクレームなんてなかった
2年間本社にいなくたって、未来ちゃんの実力は皆からちゃんと認められているんだもの

それにもし誰か異論を唱えたところで私が全力で阻止もとい強行突破してる

職権乱用だとしても私はもう未来ちゃんと離れてしまうのは嫌だった

2年間

私がどれだけの思いであなたを待っていたか…なんてきっとあなたは分からないだろうけど
それを察してほしい、だなんて思わない

だって気持ちを伝えなかったのは私だもの

何も言わないのに気持ちが伝わるなんて事実際には難しい
でもそれはしょうがないこと

人の気持ちは簡単に変わってしまう、でもどうやっても変わらない思いだってある
そんな御し難い感情を他人に理解してもらうのは気持ちをちゃんと伝えている人同士でも難しいんだから
告白も何もしていない人同士では更に難易度が増してしまう

だから私はもう待っているだけは止めた

まず手始めは一緒に部署移動

ああ本当に恋っていうのは難しい

私情でこんなことをしてしまうなんて本当はいけないのに、でもそうと分かっていても抑えられない

2年間
この空いてしまった時間
これからは1秒でも多くあなたと一緒に居たい

でも未来ちゃんは私のことちゃんと見てくれるかな?

いつも不意に不安になる
もし未来ちゃんに私以外の誰か好きな人ができてしまったら?
もし、別れた人とよりを戻してしまったら?

もし

この想いが実らなかったら?

その時いったい私はどうなってしまうんだろう

「沙織さんどうしたんですか?ぼおっとして」

後方から急に話しかけられた
少し低くて優しい声
この声は

「未来ちゃんこそどうしたの?私に何か用?」

私は座っていた椅子を回転させて未来ちゃんの方に向いた

「用という用はないんですけど、一緒にお昼でもと思いまして」

未来ちゃんの手には財布が持たれていた
あれ確か未来ちゃんって

「ねえ未来ちゃんって確かお弁当派だったよね?」

会っていない間に変わっちゃったのかな?なんだか寂しいな
私の知らない未来ちゃんばかりになってしまうみたいで

「はい。でも今日は朝あまり時間がなくて作れなかったんですよ」

未来ちゃんは何か思い出したのか楽しそうに笑っていて、その笑顔に何か私の心はざわついた

「朝から何か楽しいことでもあったの?」

「そう見えますか?」

「ええ。だって凄く良い顔しているもの」

「…何か恥ずかしいですね。気をつけなきゃいけませんね」

そう言って自分の頬を掴んで伸ばしていた
その動作がなんだか可愛くて、さっきのザワついた感じが少し和らいだ

「それで何があったの?」

聞かなければいいのに、でも気になってしまう

「あーなんと言いますか良い知り合いが出来たんです」

「良い知り合い?」

「はい。おかげで朝から楽しく過ごせました」

そう言って未来ちゃんはまたさっきの笑顔に戻っていた
だから私の心もまたザワつく

「ふーん。そっか」

私は椅子から立ち上がって未来ちゃんの空いている手をとって歩き始めた

「沙織さん?」

未来ちゃんは驚いたように後ろから声をかけてきた
そして少し引かれながら私についてくる

「お昼の時間なくなっちゃうから早く行こう。未来ちゃん」

「あ。はい」

私は未来ちゃんの手をぎゅっと握った
このざわついた心を落ち着かせたい

この手を未来ちゃんに握り返してほしい、そうすればきっと落ち着くことができる

少し力を入れてくれるだけで良い
それだけ、それだけでいいの
だから

「沙織さんの手って意外と柔らかいですね。こんなに細いのに」

いきなり私の願い以上の反応が未来ちゃんから返ってきた
私が握っていた手の甲が返されて、手のひらが私の手のひらに触れた
そして指先で、私の指先を撫でられる

「細いですね指。指輪が似合いそうです」

「そう?」

ざわついていた私の心が落ち着き始めた
簡単に乱れて、簡単に落ち着く
でもそれが出来るのは未来ちゃんだけ
未来ちゃんにしか出来ない

「今度未来ちゃんがプレゼントしてくれてもいいのよ?」

「そうですね。確か沙織さんの誕生日8月でしたよね。その時でいいですか?」

「え?本当にくれるの」

「はい。2年間プレゼント渡せなかったですし。それより本当に指輪でいいんですか?」

「うーん。そういうのはサプライズが一番なんだけどな。でも指輪がいい」

むしろ指輪がいいって思った
どうしよう凄く嬉しい

「サプライズ。じゃあそれは違う方面で。指輪は沙織さんに合いそうな物探しておきます」

私は触られていた指を外して未来ちゃんの指の間に入れて絡めた

どうしよう嬉しすぎて平常心じゃいられない
もっと期待してもいいのかな?
前よりかは少し前進できるって
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