反対な彼女

□反対な彼女−未来−
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思わず彼女達の間に入っていたのは今にも和さんが泣いてしまいそうだったから

私は彼女の泣き顔を見たくない

それが以前付き合っていた人の前ならなおさら、あの後輩の前でだけは泣いてほしくなかった

同情から?哀れみから?それとももっと違う何かから?
どれにしたって結局のところはただ泣いてほしくないそれだけ

後輩から和さんを引き離してからの帰り道、和さんは一言も何も喋らなかった
でも仕方がないことだと思う

だって昨日の今日なんだから、後輩も後輩だもっと和さんのことを考えてあげるべきではないか?
常人の神経なら普通会いには来ないだろう
いくら私物を返すためとはいえ、いったい何を考えているんだろうか

しばらく無言のまま道を進み、しばらくしたらマンションに到着した
私はそのまま和さんの手を引きながらエレベーターに乗り込んだ、私の横には沈んだ表情のままの和さんがいる

いったい何て声をかけたらいいか

チンと音がして、もう4階に到着してしまった

私はまた和さんの手を引いてエレベーターから降りた

コツコツと二人分の足音が静かな廊下に響いている

そして自宅のドア前で止まった
ガサガサとキーをバックから出してロックを解除した

そしてやはり沈んだままの和さんの手を引いて自宅に入っていった

「あ、あの未来さん」

玄関に入るなり和さんがいきなり私に声をかけてきた
私は玄関先に荷物を置いてから、和さんの方に向く

「何ですか和さん?」

「あの、今日ね、私」

言いにくそうに下を向いている

「とりあえず部屋はいりましょうか?ここじゃ暑いですし」

私は靴を脱ぎ室内に入った
でも和さんの手は離さない、離してしまったら彼女は中には入ってこない気がしたから

「え、あ。うん」

手を引かれているから和さんは慌てた様子で靴を脱いで室内に入ってきた

「お邪魔します」

と小さく後方から聞こえてきた
とりあえず私は和さんをソファーの前まで連れて行き、そこに座らせた

「少し待っていてください」

私はその場に和さんを待たせクーラーのスイッチを押してエアコンを起動させてから玄関に向かって荷物を取ってきた
そして、冷蔵庫に入れていく

今日は彼女の料理を諦める
残念だが仕方がないことだ

全てしまい終わってから彼女が待っているソファーに行って、その隣に座った

「すいません。お待たせしました」

「いえ…」

彼女は下を向いたままだ
よほどさっきのことが響いているみたいで、本当に今にも泣きそうで私はその顔を見ていると苦しくなった

「あの未来さん、今日の約束また…今度にしてもらってもいいですか?私…今日は」

そこまで言うと彼女の目から涙が落ちていた

あっと思った瞬間私の体は即座に動いていた

「未来、さん?」

私の左耳付近から和さんの声が聞こえてきた、その声は戸惑いからなのか途切れ途切れ伺うようだった

「どうして?」

「どうしてだろう。あなたを抱きしめることに理由がありません」

本当に反射的だった
とっさに彼女を抱きしめていた、理由なんか浮かばない
ただそうしたかったから そうしていただけのこと

「未来さん」

和さんは最初戸惑っているようだったけどしばらくそのままでいると、いつの間にか私の背中に腕を回してぎゅっとしてきた

そして小さく嗚咽が聞こえ始めていた

その声を聞いていると心が苦しくなる

私には何もできないのかと思わされるようで
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