mono
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「あー!!行っちゃったぁ…。」
都内某所。
私は思わぬ残業で全力疾走の甲斐も無く終電を逃してしまった…
「はぁ…仕方ない、とりあえず漫喫でも…ん?」
漫画喫茶で夜を明かそうと思っていると、全て電車がなくなってしまったホームの向こう側に見覚えのある人物が居た…。
間違いない、あれはmonoさんだ。
友人に勧められて知ったバンド、神聖かまってちゃんのキーボーディスト。
その特徴的な容姿からたまたま顔を覚えていたのだった。
「こんな所で一体…何か探してるみたい?」
私は、慌てて何かを探す彼に、声をかける。
「あの…どうしたんですか?何か探してるんですか?お手伝いしますよ!」
「あー…はいっ!ありがとうございます!あの…iPhoneを何処かに落としてしまったみたいで…」
10分近くホームを捜索したが見つからず、途方に暮れていると。
彼は少し何か考えるように固まった後、突然「アッ!!」と大きな声をあげた。
私は思わずびっくりして後ずさる。
すると彼はこう続けた。
「あ、驚かせてごめんなさい…俺、今バンドのレコーディング中なんですけど、多分そのスタジオに忘れて来たみたいで…」
「そうなんですか!?」
「あの…も、もしよかったら…スタジオに付いてきてもらえませんか?」
終電もないし、一人で居るのも寂しいので一緒についていくことにした。
駅からスタジオの道のりはあまり街灯も無く…なんとなく嫌な感じのする場所だった。
「初めて会った人にこんなこと頼んでしまってごめんなさい!俺、どうしても幽霊が出そうな場所駄目で…」
確かに、とか考えながら「いや全然」と私は返した。
男らしい外見と裏腹に幽霊が怖いだなんて、ちょっと可愛らしいと思ってしまった。
「あ。もうすぐそこなんで、スタジオ」
辺りは妙な静寂に包まれていた。
ぴしゃっ
「きゃっ!」
ただの葉っぱの滴に怯え、気づくと私はmonoさんに寄り添ってしまう格好になっていた。