リクエスト・企画作品置場

□本能と恋というもの(*)
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「ガッ!ッ、ア…は…ハァ」




ゴプリと大量の体液を吐きながら床に倒れ込む彼を見下ろしながら、アタシは妙に冴えた頭で思考する。
人の本質を理解することは、例えそれが自分自身のことであってもなかなかに難しい。

なんて、そんなこと。





実際の所。
まさか自分にこんなサディスティックな内面があったなんて気付いたのは、彼に出逢ってこうして躯を交わらせるようになってからだった。





「う゛ッェ…うら、は…ら。きッ、さ…まァ!」



「あら、すみませんマユリさん。
あんまり抵抗されるものだからつい蹴っちゃって…。大丈夫ッスかぁ?」



「…ッ!何ガつい、だ…?」



吐物の付いた口元をその細い指で拭いながら、マユリさんは怒りと痛みで血走る眼球をアタシに向けた。



「だってマユリさんもイケないんスよ〜?
最後はいつも気持ちよくて仕方ないってお顔なのに、最初は必死で抵抗するんだから…。
いい加減に、ご自分の気持ちに素直になればいいんですよ…」



そう言ってニコリと微笑めば、彼は汚物を見るような冷たい瞳でアタシを一瞥した。


情事の前、アタシがいつまでも抵抗を示す彼に一蹴り入れた鳩尾が痛むのか。
マユリさんは胃の内容物を吐ききっても尚、苦しそうに息を詰まらせ顔をしかめていた。


少し力を入れ過ぎたかもしれない、なんて。
そんな考えアタシにありはしない。



吐物に塗れながら床を這うマユリさんを見れば。
返ってその光景に、アタシは満足感を得。
更に興奮さえ覚える己の躯と精神



全くもって、ヒトたる生物は無意識の内に貪欲に快楽を求めるものであると気付き。

そして新たな自分の内なる悦びを発見できたことに、アタシは彼に感謝などした。



「さあマユリさん、今日も気持ちいいこと。しましょうね…?」



見下ろしたマユリさんの恨めしい表情と。
それとは裏腹に妖く歪む彼の口元を見取り、アタシの心は歓喜に震えた。








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