リクエスト・企画作品置場

□難しきは其の心(*)
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《十二番隊・技術開発局》




護廷十三隊の中で、そこは直接的な戦闘力にならずとも。
実験・研究・新技術の開発・現世とのモニタリングなど、他の隊とは全く異なる特殊性を持った部隊である。

故に非常時など、局員はそれぞれ寝ずの研究・調査を続けるこがある。

それは上官クラスであっても同様であり。
そんな時は局員同士、互いに一週間以上顔を合わせない事も稀ではなかった。




このところの開発局は、大きな緊急事態や目新しい研究材料の搬入などがあったわけでもなく、非常に穏やかな日々が流れていた。



だかしかし現在。
この局の局長である浦原喜助は、自ら招いてしまった事態によって恋仲でもある副局長のマユリとの接触を、一月近く絶たれてしまっている状態にあった。

その原因が自分にあることを喜助は大まかに理解はしていたのだが。
ここまで長くマユリに避けられる、根本的な要因にまで考え至ることができずにいた。



ご機嫌を伺うようにマユリに近付けば、直ちに刀を抜いて威嚇され。
それならばと、不機嫌の原因を素直に問えば冷たい視線を向けられ無視される。

なのでこの三週間の間、喜助はその要因を悶々と考え込むしかなかったのだ。



しかし考え込むと同時に、マユリへの募る想いともどかしさは日々積もり。

喜助は今まさにこの状況を打破する術を持てず、思考の無限ループをさ迷っていた。















《十二番隊隊長・宿舎一室》



深夜。
そこら密かに聞こえる、熱の篭った男の声。






「マユリさッん…は、ハァ。やっぱり、眠れないっスよ…」


マユリ、と。
その名を呼べばそれだけで、男の心と躯は再び高鳴り熱を帯びた。

今宵何度目かの自慰を終えてもなを、冴える意識に火照り続ける己の躯をどうしたものかと。
喜助はもう随分と前から、悶々と燻る気持ちと躯を持て余しながら自室に篭るのだった。




「は、ハッあ…、何でなんスかね。いつもならコレで少しはおさまるの、にっ…」

そう言って喜助は己の精液で汚れた両手を力なくダラリと下げ、熱の篭った虚ろな瞳で天井を見上げた。

精を解放した肉体の快楽と、少しの気怠さ。

ドクドクと煩い程の己の鼓動音に反して、しかし心は何故か満たされない。

僅かに乱れる息を整えようと、喜助は布団の上でゴロリと仰向けになりゆっくりと瞼を閉じてみるのだが。

目を閉じ脳裏に浮かぶ影像は、やはり最後に躯を交えた時のマユリの淫猥なる姿ばかり。



「はぁ…、アタシやっぱり欲求不満みたいス。
三週間以上もマユリさんに触れてないんじゃ、仕方ないっスよね…」


と、独り言の様なその呟きもまた。
今宵何度目になるだろうかと思い返すと、喜助の胸には切ない虚しさばかりが過ぎるのだった。



マユリとの情交により得てしまった深い快楽故に。

近頃ではいくら自慰に耽ったところで、己の躯と心の熱が一向に冷めてはくれない事に、喜助の頭はじくじくと痛んだ。


















喜助がマユリと出会い、奇跡的に恋仲となって数年。

喜助は彼への熱い想いを持て余し、日々マユリを監視するが如く目で追い声を掛け、纏わり付いた。



それはプライベート以外の時間にも。
例えばマユリが研究所内で仕事をしていても、そこで誰が見ていようが変わりはなく。
朝から仕事を終える夕刻、ともすれば深夜に至るまで続いた。



喜助のその姿はまるで恋する乙女かストーカーの如く、浮ついていたのだ。



相思相愛の恋人達ならば、それは特別なことでもないかもしれない。
だが喜助の恋の相手は、元来人を寄せ付けない人間嫌いと言ってもいい程の奇人。



マユリにとって、喜助のその度を過ぎたしつこい態度と執着は段々と苦痛の種になっていった。

しかし恋に盲目状態が暫く継続中であった喜助には、マユリのそんな些細な心の変化に気付ける筈もなく。





二十日程前、遂にマユリはキレた









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