リクエスト・企画作品置場
□愛されたがりの瞳(*)
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それはほんの一時のこと
情事の際、マユリは自らのそのとても大きなプライドと理性を何処かすっかりと置き忘れてしまったかの様に、まるで遊女の如く淫らな側面を現にする事があった。
勿論それはマユリを好いており、同じ性であるにも関わらず彼に情念を抱いてしまう喜助にとっては堪らない事であって、益々もって未だ知らぬ彼の躯や本質に魅了されていく起爆剤の様な現象でもあった。
そうした現象が今宵突然とマユリの身に生じ
彼は延々と、喜助の強靭な躯にすら幾つかの傷を残す程に乱れ喘いだ
その様は底無しの欲に溺れるが如く。
「何かあったんですか、ねえ…マユリさん?」
激しく抱き合った情事の気怠い空気を纏ったままに、少し掠れた低音を響かせながらマユリの背に声を掛ける。
喜助の腕の中で静かに瞳を閉じているだろうマユリは未だ意識を手放している気配は無く、しかし先程からピクリとも動く様子も無かった。
「貴方がこうして黙ってボクに抱かれてる時って、何かある時じゃないっスか。ね、何かあったんでしょ?教えて下さいよ」
「…………」
抱き寄せた喜助の視線の先に、マユリの骨張った肩と滑らかな背が見える。
薄暗い部屋の中でゆっくりと上下するそこに、喜助は己の額をゆっくりと寄せていった。
そして啄む様な仕種でしっとりと湿ったマユリの項に僅かに唇を寄せると、彼の冷えゆく体温と硬くも弾性のある肌の感触が、喜助の欲を再び再燃させていくのだった。
「言いたくないのなら、構わないんスけどね」
それでも何も語らず動こうとはしないマユリに気付かれない程の小さな笑みを浮かべ、喜助は背後から彼を抱く腕に力を込めた。
*