主文

□指先に触れるモノ
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「お邪魔しますよォ〜…」

ソロソロと、浦原は深夜の技局へ足を運ぶ。





今日は隊長格に緊急召集がかかり、ほとんど研究室に寄れなかった。

流石に誰も居ないだろうと思いつつ様子を見に来たところ、廊下に技局からの灯が漏れていたのだ。


「誰でしょうねぇ〜、本当に皆さん、研究熱心なんだから……おや?」

ギィっと技局のドアを開けると、浦原の見知った背が見えた。

技局の一番奥、いつもの場所にマユリの姿。



「マユリさん…?」

浦原が声をかけても反応がない。
近寄ってみると、資料を一杯に並べた机に突っ伏し、緩やかな寝息が聞こえた。



(おや、これは珍しい!)

浦原はマユリの寝顔を見つめ、少し感激などした。


普段、大きな研究中のマユリは殆ど食事や睡眠を摂らないことを、浦原は最近知った。

本人に聞くと、その方が精神が鋭敏になり良い研究成果がでるのだと、彼は言いった。



「本当に、研究に打ち込むとそればかりで…、もう少し自分の身体を大事にして欲しいッスね」

淡い明かりに照らされるマユリの目元には、少し隈ができている様子だった。

こんなにも近くで彼の顔を眺めるのもまた初めてで、浦原はますます近くで顔を覗き込んでみた。


いつものように全身に化粧を纏い、一見奇怪な姿に見えるマユリだか、よくよく見るととても整った顔立ちだ。


余分な肉は結果無く、スッと延びた鼻梁。
唇は、少し薄い。
髪は意外にも艶のある、柔らかそうな蒼。

着衣から伸びる手足は細いが、決して華奢でもなく。指は神経質そうに細く長い。
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