主文
□技術局の夏
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瀞霊廷十二番隊技術開発局・霊派計測科及び通信技術開発科。
そこでは現世から尸魂界全域の監視・通信が行われ、戦闘要員とはまた別の重要な任務を担っていた。
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「なんか最近…旅禍の侵入もなーんもなくて、暇だよな」
監視モニターをボンヤリと眺めながら、局員のヒヨスが呟いた。
「確かに。だが何もないことは良い事だと思うよ」
「…?」
背後から聞こえる声に、ヒヨスは振り返る。
「あれ、いたのか阿近?」
「ああ」
ひょこりとラボに現れたのは、額に生える角が目印の少年だった。
阿近はここ通信技術開発局と、副局長の涅がいつも在席する研究部局を行き来することが多い。
態度は大きいが、外見は未だ少年の幼さが残っていた。
「今日は副局長の実験の手伝いしなくていいのか?」
「ああ、さっき浦原隊長に追い出された。
涅副局長と二人っきりで、実験したいんだと」
ややげんなりした表情で阿近が溜息をつく。
「あー…あの二人、喧嘩しながら何気に仲良いんだよなぁ。やっぱ、検体実験とか好きだし同じ感覚で気が合うんかな」
「…いや。俺が見る限り浦原隊長が一方的に、副局長にちょっかい出してる感じだ」
「お前…、ガキのくせによく見てるなぁ」
「うるせーよ、もうガキじゃねぇ」
ムッとした表情で、阿近はヒヨスを見遣った。
「あ〜もう、なんか面白ぇことないんかな。
おい、リン!お前なんかしろ」
「エッ!?」
突如ヒヨスに声をかけられたリンは、ビクリと震えた。
リンは最近技局に入隊してきた局員で、外見こそまだまだ子供だが、既に人並み以上のオペレーション業務をこなしている。
だが局員の中で最も若く下っ端のリンの立場は性格共に弱く、他の局員からのイジメを受けやすいタイプだった。
「聞こえなかったか、リン!」
「え〜、何かしろと言われましても…」
「うるせーな、とっととやれ!」
「そんなぁ〜。無理です…ごめんなさいっ…!」
やや涙目でフルフル震えるリンを見て、阿近が溜息をついた。