主文

□続・技術局の夏
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夏。



ギラギラと照り付ける太陽



打ち寄せる波の音



人間の渦・雑踏・響き合う声




― 現世・某所 海岸 ―



そんな遊園場所に、不似合いな一行はやってきた。









「いやぁ〜!やっぱ現世の夏は、暑いッスねぇ」





パタパタと扇子を扇ぎながら、喜助は滲み出る汗を手の平で簡単に拭った。



「浦原隊長…?やっぱりあの、俺達浮いてませんかね。此処で…」




喜助の後ろを歩く十二番隊・技術開発局のメンバー達が口を揃えて問い掛ける。


「そっスか?」


安穏とした声で、喜助はメンバー達に返答した。








事の始まりは数週間前―。


十二番隊隊長及び技術開部局長である浦原のしつこい命により、嫌々ながら現世の海に連れて来られた局員計6名。



《謎の巨大深海生物の調査・虚との関連性の有無》

と、大層な理由を付けての本日の現世視察となった訳である。



しかし浦原をどう見ても、局員殆どが赴かなければならない程の緊迫感を、メンバーは感じなかった。



更には浦原はじめメンバー全員水着着用という、なんとも意味不明な出で立ちだ。







「隊長、今回は視察が目的なんですよね?
なんでこんな恰好を…?」


喜助の後ろを歩く阿近が、怪訝そうに問い掛ける。

もちろん阿近も裸に褌、上に軽い白の羽織りを着用するだけの軽装である。





「あ、それはまぁそれとして。
今回の真の目的は、皆さんの日頃のストレスを発散させる為のリフレッシュ休暇を取ったんスよ!」




「「!!!!……」」




喜助の言葉に、局員全員固まった。


確かに数週間前。ラボで話しをしているうち、局員のリンがそれらしいことを言ってはいた。



しかし、遊びでこれ程の主要メンバーを現世に送り込むほど上層部は甘くない。



一体どんな理由と話術で今日の現世行きが決めたのだろうかと、皆不思議に思うくらいだった。



本当に、その言動に謎の多い上司に局員皆うなだれた。








「隊長っ!巨大生物の視察に現世で遊んで帰れるなんて!
僕うれしくって!!
ありがとうございますっ」

阿近の更に後ろから、突然喜々として走り寄ってきたのは技局最年少のリン。


現世自体はじめて渡ってきたため、随分と興奮している様子だった。





「喜んで頂けて、嬉しいッスよ。
今日は現世の夏を満喫して帰って下さいね、リンさん」


「はいっ!隊長!!」



いつもより明るく元気な様子のリンに、喜助はニコリと微笑んだ。









『なぁリン、お前しか嬉しがってねーよ…』




心中呟く阿近であった。




「さぁさぁ、皆さんもこれから3時間フリータイムっス!
日頃のストレスと不健康な体、真夏の太陽でスッキリさせちゃって下さい!」




爽やかに笑う喜助に、醒めた眼を向けながらゾロゾロと局員達は浜辺へ散って行った。




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