小咄

□マユリ様と卯ノ花さん
1ページ/2ページ






「………」



「……」



…………、


………。









「……オイ」



「はい…、何でしょう?」


「…卯ノ花隊長。何故キミが、ワタシの前にいるのかネ?」



「さぁ…。気付いたら此処に居たものですから。
わたくしにはさっぱり…」




「…まさかキミと、二人きりになる事があるとはネ」



「あら?わたくしと二人きりは、お嫌ですか…?」



「何も、そんな事は言ってはいないヨ…」



「フフッ…。
そういえば、貴方が技術局に来られてから随分と時が経ちましたね?
外(静霊廷)での暮らしには、もう慣れたのですか?」



「ふん、心配には及ばないヨ。
此処には沢山の研究材料が用意されているからねェ…。
実に楽しい、毎日だヨ」



「それは良かったですこと…。
浦原隊長とも仲良くされているようで、総隊長も安心されている御様子ですし」




「ワタシと浦原が…?
…卯ノ花隊長殿。間違った見解は止めてくれ給えヨ」



「あら、何故?
随分と仲良くお話しされていると思っていましたが…?」



「どこが?
浦原が勝手に、ワタシに話し掛けているだけだヨ。
あんなヤツが隊長とは、技局の先も見えていると思うがネ…」




「あら酷い。
浦原隊長は素晴らしく聡明な化学者だと、わたくしはそう思っていますのよ?」



「ホウ…。ヤツが聞いたら有頂天になりそうな言葉だ。
しかしワタシの方が確実に、化学者としての才は上回っていると。…そう思っているがネ?」



「本当に、自信家な方。
浦原隊長が引き抜いてきただけのことはありますね。…けれど―、」





「なんだネ―?」





「貴方のその傲慢さ。
いつか、浦原隊長の才を知った時に。
きっと自らを恥じることになるでしょうね…」


「なに…?」



「貴方にもまだ知らない事が、この世には沢山あると言うことですわ…」



「知ったようなコトを…」


「あら。だってわたくしの方が貴方より長く生きているのですよ。
それに―、
浦原隊長との仲も、貴方よりずっと長いのですから…。ねぇ、副隊長殿?」





「…嫌なオンナだネ、キミは」



「ふふっ。初めて、言われましたわ」



「そうかね?皆、キミが恐いのではないのかネ」



「酷いですわ。
でもそうですね、そうかもしれません…。
貴方はわたくしが、恐ろしいですか?」





「恐ろしい?そんな気持ちはないヨ、毛ほどもネ…」



「それは良かったですわ。わたくし達、仲良くやっていけそうですわね」



「…何故、そうなる?
ワタシは誰とも馴れ合う気などないヨ!
浦原といいキミといい、護廷隊にはオカシな輩が多くて疲れるよ」





「貴方に言われるとは、隊士には余程変わった者が多いのでしょうね。
けれど貴方も充分に、異才をお放ちでしてよ…?」



「その笑い、止めてくれ給えヨ。
とにかくワタシは隊士の誰とも馴れ合う気はないのだからネ。
気安く話し掛けるなと、浦原にも言っておいてくれ給え」



「わたくしが浦原隊長に?んふふっ…。人の恋路に水を差すことなど、わたくしにはできませんわ」





「…何だと?」



「ふふッ…。ですから恋のお邪魔はしないことに、していますの」



「何の、事だネ―?」





「それは、秘密ですわ」





「…―全く。
やはり嫌なオンナだヨ、キミは」




「わたくしは貴方が嫌いではありませんよ?」









「嬉しく、ないネ…」









終。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ